500年後の誘惑 クラーナハ展図録 グイド・メスリング 新藤淳 他編著  2016年刊 TBSテレビ

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クラーナハ2

 

クラーナハはエロでありグロである。

 

クラーナハ7

 

今ならサイコパスと言われそうな女性像や

少女のような裸体、エロじじいと金目当ての情婦など

スキャンダラスなテーマで絵画を量産した

俗っぽいメディア企業のトップ

のようにも思えるが

はるか後世まで参照され続ける改革者の肖像や

祭壇画も同時に描いている。

 

クラーナハ12

 

顧客の様々な要望に応え

硬軟取り混ぜて

ハイカルチャーでもサブカルチャーでも何でもありで

どこよりも素早く完成度の高い仕事を仕上げる

16世紀版「プロフェッショナル 仕事の流儀」で

時代を駆け抜けた。

 

現代まで参照され続けているのは

ルターの肖像だけではなく

メディア企業としてのクラーナハ工房の肖像。

宗教改革だけではなく、

職業改革でもあったといえるのかもしれない。

 


 

● 関連する記事 ~宗教改革の時代に関して~ ●

・『宗教改革の真実』 永田諒一 著

・『宗教改革とその時代』 小泉徹 著

・『主権国家体制の成立』 高澤紀恵 著

・『クラーナハ《ルター》』 マルティン・ヴァルンケ 著

・『500年後の誘惑 クラーナハ展図録』グイド・メスリング 新藤淳 編著

・『宗教改革』 オリヴィエ・クリスタン 著

・『キリスト者の自由 他』 マルティン・ルター 著

 

● 周辺の記事 ●

国立国際美術館105 地下室のアート ~国立国際美術館~

 

 

パンセバナー7

パンセバナー6

 

 

 

地下室のアート ~国立国際美術館~

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国立国際美術館107

国立国際美術館106 国立国際美術館24 国立国際美術館104

 

大阪中之島にある国立国際美術館には建物がない、

ように見える。

美術館があるべき場所には

金属パイプを好き勝手に曲げて組み合わせた

巨大なオブジェが置かれているだけである、

ように見える。

国立国際美術館は地上には入口しかなくて

本体はすべて地下にある。

 

国立国際美術館17 

 

なぜそんなことになっているかというと

敷地が狭かったことと

たぶん設計者のシーザー・ペリが

モダン作品を中心に集めた美術館らしく

金属パイプを組み合わせだけに見える超モダンな建物を作って

どや顔をしたかったということなのだろう、

と想像する。

 

国立国際美術館18

国立国際美術館15 国立国際美術館13 国立国際美術館8

 

何だかこれ見よがしで、

これだからアメリカの建築家はねぇ~

などと思いながら

地下1階のエントランスに降りると

意外と気持ちのいい空間である。

光がいい。

ガラスの天井から地下に差し込む光が

厳かな感じで落ち着く。

 

国立国際美術館21

国立国際美術館4 国立国際美術館20 国立国際美術館19

 

ここから地下2階、3階の展示室へ降りていく。

アートの世界に深く没入していく感じである。

 

国立国際美術館10

 

とてもいい。

ちょっとパイプが邪魔で、

日本人の頭にある竹のイメージは

もうちょっと繊細な感じだと思うけれど・・・

 

この時開催されていたのは

《500年後の誘惑》クラーナハ展だった。

地下の奥深くで開かれるのにぴったりのテーマである。

 

国立国際美術館6 

 


 

 

● 関連する記事 ●

 

クラーナハ2

『500年後の誘惑 クラーナハ展図録』

 

『クラーナハ《ルター》』 マルティン・ヴァルンケ 著 岡部由紀子 訳  2006年刊 三元社

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クラーナハルター1

 

『クラーナハ《ルター》』  
マルティン・ヴァルンケ 著 岡部由紀子 訳
2006年刊 三元社

 

宗教改革の歴史が語られる時、
必ずと言っていいほど登場するルターの肖像。
その肖像は政治的な利用のために巧妙に描き分けられていた。
描かれた肖像の政治的背景と
それを描いたクラーナハ、描かれたルターの関係。
現在不動のものとして流通する宗教改革者のイメージが
どのように図像として成立していったかを解説する。

100ページあまりの小さな本で
本体価格2000円はちょっと高いけれど
政治と美術と宗教が交錯する内容はとても興味深い。

 

 

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『宗教改革の真実』 永田諒一 著  2004年刊 講談社現代新書

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宗教改革の真実3

 

『宗教改革の真実』
永田諒一 著
2004年刊 講談社現代新書

 

後半細かな具体例に入り込みすぎている感じもするが
宗教改革が宗教自体の厳格化と同時に
生活の世俗化=都市政府台頭をもすすめた、
あるいはその両方が時代の枠組みの根底からの変化の
現れであったということがよくわかる内容になっている。
そしてこの枠組み変化とは
宗教体系と日常生活のリンクが外れたことを意味する。
現代に至る<世俗主義>のはじまりである。

 

宗教改革の真実1

 

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『マネーの進化史』 ニーアル・ファーガソン 著 仙名紀 訳  2009年刊 早川書房

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マネーの進化史2

 

『マネーの進化史』
ニーアル・ファーガソン 著 仙名紀 訳
2009年刊 早川書房

 

アメリカの学者やジャーナリストの書く本はやたらと分厚い。
そして重い。
書架に占める面積もしくは体積こそが、その本の価値であると
言わんばかりである。
だから電子書籍になってくれることがとてもありがたい。
そして合理的だと思える。
この『マネーの進化史』も500ページくらいある
(それでも同じ著者の『憎悪の世紀』に比べれば半分くらいなのだが)

この本の場合、どの章もそれぞれ興味深いのだが
全体としてはやや見通しが悪い気がする。
現代の金融の混乱から遡って
マネーの<リスク>というところにフォーカスしてもらうか
逆に現代の混乱から一歩引いて歴史的視点に徹してもらうか
した方がわかりやすかったように思う。
メソポタミアのトークンとシカゴのオプションをつなぐ線が
少々伸びすぎて霞んでしまうのである。

 

マネーの進化史1

 

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3月の睡蓮 ~水生植物公園 みずの森~

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みずの森53

 

草津市の烏丸半島にある草津市立水生植物公園みずの森

 

みずの森36 みずの森44 みずの森37

 

国内有数の花蓮の群生地に隣接するこの公園では

睡蓮のコレクションが美しい。

 

みずの森34 みずの森48 みずの森43

 

本格的なシーズンはまだ先だが

温室では年間を通じて熱帯性の睡蓮を見ることができる。

 

みずの森41

 

それほど広くはない温室だが500種以上の植物が集められている。

 

みずの森24

みずの森25 みずの森54 みずの森46

みずの森32 みずの森49 みずの森27

 

外では雪が舞っていても

この中は小さな熱帯である。

 

みずの森55

 

まだ寒い屋外でも

既に豊かに開いた花もある。

 

みずの森6 みずの森78 みずの森9

みずの森65 みずの森81 みずの森64

みずの森67 みずの森76 みずの森68

 

クリスマスローズやアイスチューリップなど・・・

 

水と空と土が

次々と春を宣言していくようだ。

 

 

みずの森75

 

もちろん今の時期に開くように

熱心に栽培されてきた結果ではあるのだが・・・

 

みずの森14

 

みずの森のみなさん 美しい花々をありがとう。

 

 

『無葬社会』 鵜飼秀徳 著  2016年刊 日経BP社

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無葬社会4

 

『無葬社会』
鵜飼秀徳 著
2016年刊 日経BP社

 
『寺院消滅』という本がベストセラーになったので
これは二匹目のドジョウを狙って書かれた、
などというのはもちろん失礼である。
 
ホームレスの人たちが
最期は仲間に看取ってほしいと願うところなど
しっかりとした取材がないと出てこないであろう
人間社会の本質に迫る感動的なエピソードである。
連載記事としてなら十分以上の内容である。
ただ一冊の書籍としてみた場合、
豊富な取材が仇になって
まとまりに欠けているのが残念なところである。
 
もちろん現場の現実は
多様で雑多でまとまりのないものなのだから
仕方のないことなのだけれど・・・
 
無葬社会2

 
 

パンセバナー7

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『寺院消滅』 鵜飼秀徳 著  2015年刊 日経BP社

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寺院消滅2

 

『寺院消滅』
鵜飼秀徳 著
2015年刊 日経BP社

 

「日経ビジネス」の記者であり僧侶でもある著者による伝統仏教のレポート

「日経ビジネス」は日本で最も信頼されている経済誌のひとつである。
マネー誌ともゴシップ誌とも区別のつかない
その他多数の自称経済誌とは一線を画した密度の濃い内容で、
それでいて週刊誌としてのフットワークの軽さも兼ね備えている。
そして極めて多様な層のビジネス・パーソンの興味を惹き続けている。

この本もそんな「日経ビジネス」の路線にしっかり乗った本である。
大きな数字で近未来を予測してみせ、読者を驚かせる。
そして現場取材の<生の声>で畳みかけ、
これでどうだと納得させる。
もちろん納得する。
プロフェッショナルな記事ある。
横綱相撲である。
素晴らしい。
でも、
あくまで週刊経済誌の目線でしかないことも確かである。
世の中の移り変わりについて鮮やかに描いてみせてくれるけれど、
宗教意識の核心に迫るわけではない。
だからこれは日本の電機業界が衰退していく姿を追ったレポートと
同等に素晴らしく、そしてそれ以上のものではない。
日経BP社なのだから、もちろんそれでいいのだが・・・

 

寺院消滅1

 

 

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『冠婚葬祭の歴史』 互助会保証株式会社・一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会 編 2014年刊 水曜社

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冠婚葬祭の歴史2

 

『冠婚葬祭の歴史』
互助会保証株式会社・一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会 編
2014年刊 水曜社

 
執筆者は国立歴史民俗博物館の山田慎也氏他4名
 
冠婚葬祭に関する民俗学・人類学の入門書。
日本における誕生前の祈願から死後の供養までを追う。
互助会の1日研修のテキストとしてまとめられた感じであるが、
写真も多く読みやすい内容になっている。

 

冠婚葬祭の歴史3

 

 

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