『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 M.ウェーバー 著 中山元 訳 2010年刊 日経BPクラシックス

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プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(中山訳)4

 

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
M.ウェーバー 著 中山元 訳
2010年刊 日経BPクラシックス

 

新訳で読みやすくなった『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』。
100年以上前の社会学の本なので、現在とは感覚の違いも感じますが、
今でも(翻訳で読んでも)堂々とした印象を受ける名著です。
キリスト教文化圏にいない者にとっては、
細かい宗派の違いなどはわかりにくいですが、
それでも<宗教>から<産業>への大きな流れには深く納得させられます。
<呪術からの解放>から<鋼鉄の檻>への展開はドラマチックで、
この本自体が神話化する理由でしょう

 

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『ルネサンス文化と科学』 澤井繁男 著  1996年刊 山川出版社

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ルネサンス文化と科学1

 

『ルネサンス文化と科学』
澤井繁男 著
1996年刊 山川出版社

 

山川出版社の世界史リブレットシリーズの一冊。

ルネサンス期に起きた意識の変化、
世界観の劇的な変化を当時の日記などを手掛かりにたどる内容である。
ブルクハルトの言う「世界と人間の発見」とは
客観的な視点で見た自分とその自分が関わる世界という意味であろう。
神の眼という客観性から、第三者的な承認という客観性へのテイクオフ。
そこで開けた視界の中に法が整備されマネーも流通するようになった。
国家やメーカー、金融機関による保証がネットの「いいね!」や
ブロックチェーンの承認の連鎖に変わっていくようなものであろう。
そこには移行期の不安定さがあり、一種の「死の谷」があったはずだ。
その「死の谷」を飛び越えさせたのがオスマン帝国や黒死病の衝撃であったろう。
それまでの信仰は侵略からも病からも人々を守れないという
現実を突きつけられ目からうろこが落ちたということだろう。
これが後の宗教改革や産業革命の出発点となる意識の転換点、
<客観性革命>とでも言えるものなのだろう。

 

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『国民国家とナショナリズム』 谷川稔 著  1999年刊 山川出版社

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国民国家とナショナリズム1

 

『国民国家とナショナリズム』
谷川稔 著
1999年刊 山川出版社

 

山川出版社の世界史リブレットシリーズの一冊。

人は人とつながるために、人類史の始りからずっと、
何万年か何十万年かもしかしたら何百万年かかけて、
数えきれない発明を繰り返してきた。
国家やナショナリズムももちろんその発明のひとつである。
かなり古びているし、隙間だらけでガタガタであるが、
今でも最強、最大の発明である。
何億人もの人がつながるSNSもあるが、
それは無数の小さな集団の寄せ集めに過ぎない。
ビッグデータが世界中の人々を
様々な切り口でどのような集団に分類しなおしても、
人々は分類された集団に対して忠誠心など抱かないだろう。
おそらくナショナリズムのような強力な結びつきには、
<身体性>のようなものが不可欠なのではないだろうか。
人間の五感を規定しているものの連続性の意識が引く境界線が
ナショナリズムの原初的なもの、すなわち<ふるさと>
と 呼ばれるものなのかもしれない。

 

国民国家とナショナリズム2

 

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『社会人類学』 中根千枝 著 2002年刊 講談社学術文庫

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社会人類学2

『社会人類学』
中根千枝 著
2002年刊 講談社学術文庫

「タテ社会の人間関係」拡大アジア版、というか本筋はこちらで
「タテ社会」はこの中にあらわれるモデルのひとつと解釈すべきなのだろう。
そしてこれがあるから「タテ社会」論が、単なる印象論ではなく、
学問的に検討されるべき価値のあるものだとはっきりわかるのである。

 

社会人類学1

 

 

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『タテ社会の人間関係』 中根千枝 著 1967年刊 講談社現代新書

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タテ社会の人間関係1

 

『タテ社会の人間関係』
中根千枝 著
1967年刊 講談社現代新書

 

50年も前に書かれた本なのに、
いまだに版を重ねながら新鮮さを保ち続けている現代日本の古典
現象ではなく構造、社会風俗ではなく社会モデルを抽出して書かれたものなので
時代が変化しても簡単には風化しないし、
その構造そのものも簡単には変化しないので、常に参照され続けるのである。
もちろん今から見れば、それなりに人々の意識は変化しているし、
書かれていることに古風な印象も受けるが、
それらは暗黙の了解として存在する社会構造の上で
起きている変化であるとも言える。
例えば大企業のトップ人事で、比較的若い人が選ばれると、
30人抜き大抜擢などと言われて騒がれる。
意識は変化しているので能力による起用は普通に起きているのに、
序列構造が残っているので○人抜きという表現になる。
序列がなければ、そもそも抜くべき順番も存在しない。
このモデルに気が付いたのは、著者が女性であったからだろう。
当時の日本で女性で学者で東京大学でインドでチベットで、
という全く非体制的でマイノリティな存在であり、
日本とアジアとヨーロッパと都市と田舎と女性社会と男性社会とを横断して、
それらを俯瞰する視点を得ていたのである。
そしてその視点を生かすための明晰な頭脳と猛烈なバイタリティがあった。
著者は今年で90歳になられますが、
自らの歩むべき道をしっかり歩まれてきて、
おそらく老いても
死ぬまでお元気なのではないか、
という気がします。

 

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『レヴィ=ストロース』人と思想96 吉田禎吾 板橋作美 浜本満 共著 1991年刊 清水書院 センチュリーブックス

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『レヴィ=ストロース』人と思想96
吉田禎吾 板橋作美 浜本満 共著
1991年刊 清水書院 センチュリーブックス

 

主に高校の教科書を出版している清水書院の「人と思想」シリーズの1冊。
「人と思想」は幅広く様々な人物を取り上げている息の長いシリーズで、
おおよそ高校の副読本の延長くらいのスタンスで書かれており、
堅苦し過ぎず刺激的過ぎず偏りなくわかりやすい内容になっている。
この巻も、来日時のレヴィ=ストロースの様子などにも触れており親しみが持てる。
日本を旅行していた時のこの写真などを見ていると 、
大学者の大思想家も実は穏やかで気のいいじいさんなのだ、と感じる。

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もちろん人物への親しみと思想の解読は別物ではあるのだが…

 

 

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『レヴィ=ストロース入門』小田亮 著 2000年 刊 ちくま新書

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『レヴィ=ストロース入門』
小田亮 著
2000年 刊 ちくま新書

 

レヴィ=ストロースの<構造>と言語学、数学との関わりにはじまり、
構造主義人類学に向けられる批判を<構造>の基本とともに検討し、
次いで主な著作である『親族の基本構造』『今日のトーテミズム』
『野生の思考』『神話論理』を順番に解説していくという、
よく整った内容の入門書。

融通無碍でとらえどころに少々コツのいる<構造>と
自らの思想の足場ごと崩しながらレヴィ=ストロースが批判する<歴史>
とらえどころがなくて足場もないから
わかりにくくて幻惑的、そして
スリリングと言えばスリリング。

 

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『日本中世の民衆像』 網野義彦 著 1980年刊 岩波新書

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日本中世の民衆像
網野義彦 著
1980年刊 岩波新書

 

1979年に行われた岩波市民講座の講演記録もとに書かれた本
話し言葉で平易に書かれている
前半が平民像、後半が職人像となっている

 

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『ビーズ』池谷和信 編 2017年刊 国立民族学博物館

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『ビーズ』
池谷和信 編
2017年刊 国立民族学博物館

 
国立民族学博物館の企画展『ビーズ ~つなぐ かざる みせる~』の図録。
10万年前の貝殻のビーズからはじまり、様々な美しい素材が
世界中を流通して人々を魅了してきた人類史。
 
ある程度大きなまとまりのある集団が
同じく大きなまとまりのある集団と交易をして
財が世界に拡散する。
そしてその財が富や地位を象徴するようになり、
交易がさらに活発になり
より遠隔地に及ぶようになる。
世界はビーズによってつながっていく。
 
貝の道、石の道、琥珀の道、ガラスの道・・・
 
さらにその財が地域に飽和してくると
交換の基準としての貨幣に転じていったかもしれないのだが
この企画ではその点についてはあまり語られていない。
 
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それにしてもビーズのコルセットを巻いた
アフリカの若者は抜群にセンスが良くて
惚れ惚れするほどクールである。
肉体の感覚と美の感覚を研ぎ澄ますことに
存在のすべてを投じているかのようにさえ見える。
高貴で美しい。
もしそれが命を懸けるほどの鋭さであるなら
それは部族間の争いを引き起こす原因に
なってきたのかもしれないと思うほどである。
 
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人はお金に代えられないもののために命を懸ける。

命を削るような生き方は高貴ではあるがはかない。

何でもお金で解決できると考えるほど堕落した人は

凡庸に長生きをする。

何でもお金で解決できると考える人びとの国は

凡庸ではあるが平和で豊かになる。

人類は様々な相互意識の強烈な軋轢を

貨幣に変換することで回避し、平和を築いてきたと言えるだろうか。

問題を水に流すのではなくカネという大きな流れに流すことを

社会的に発明したと言えるのだろうか。

 


 

 

●関連する記事

 

ビーズ4

一粒の人類史 ~国立民族学博物館 企画展『ビーズ』~

 

 

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『宗教改革 ルター、カルヴァンとプロテスタントたち』 オリヴィエ・クリスタン 著 佐伯晴郎 監修 1998年刊 創元社「知の再発見」双書

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『宗教改革 ルター、カルヴァンとプロテスタント』
オリヴィエ・クリスタン 著 佐伯晴郎 監修
1998年刊 創元社「知の再発見」双書

 

教対立による混乱の血なまぐさい図版多数の本。
これを見ていると
混乱や殺戮などが満ち溢れた
無数の俗世の表現の果てに
「聖テレジアの法悦」が忽然と現れて、
この偉大な傑作が単にベルニーニ個人の才能だけではなく
血みどろの歴史という基盤があってこそ成立したものなのだと
腑に落ちる。

 

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● 関連する記事 ~宗教改革の時代に関して~ ●

・『宗教改革の真実』 永田諒一 著

・『宗教改革とその時代』 小泉徹 著

・『主権国家体制の成立』 高澤紀恵 著

・『クラーナハ《ルター》』 マルティン・ヴァルンケ 著

・『500年後の誘惑 クラーナハ展図録』グイド・メスリング 新藤淳 編著

・『宗教改革』 オリヴィエ・クリスタン 著

・『キリスト者の自由 他』 マルティン・ルター 著

 

 

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