『神話論理』 C.レヴィ=ストロース 著 早水 洋太郎・他 訳 2006-2010年刊 みすず書房

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『神話論理』
C.レヴィ=ストロース 著 早水洋太郎・他 訳
2006~2010年刊 みすず書房

 

これは『悲しき熱帯』と同じように構造主義云々という類の本ではない。
むしろ分析とは正反対の極にある本である。
そして『悲しき熱帯』からずっと続いているレヴィ=ストロースの情熱と饒舌が
とにかく果てしなく連鎖して展開し続ける本である。
書物としての体裁をとっていることが間違いなのではないかと思えるくらいの、
本という四角い箱の壁を渦巻きながら内側から破壊して拡大しようとするような
捉えどころのない力強さ。
その力に振り回されて、この本を読む者は神話に酔う。
地に足のついた整然とした分析の感覚が麻痺して宙に浮いたようになる。
そして夢にまで見るようになって、
夢の中でそれが夢なのか本なのか神話なのかわからなくなってしまうのである。

でも、それでいい。
それでいい。それでいい。と、この本は神話を肯定し続けているのだから。

 

 

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『レヴィ=ストロース「神話論理」の森へ』 渡辺公三・木村秀雄 編 2006年刊 みすず書房

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神話論理の森へ

 

『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』
渡辺公三・木村秀雄 編
2006年刊 みすず書房

 

「神話論理」の解説や、レヴィ=ストロースへのインタヴューなど
盛り沢山な内容になっていますが、
これは<全巻揃えると45000円もする『神話論理』を買った人>が
オマケでもらうべき本(非売品)のような気がします。

 

 

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『ブラジルへの郷愁』 C.レヴィ=ストロース 著 川田順造 訳 2010年刊 中央公論新社

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ブラジルへの郷愁

 

『ブラジルへの郷愁』
C.レヴィ=ストロース 著 川田順造 訳
2010年刊 中央公論社

 

レヴィ=ストロースが「悲しき熱帯」ブラジルに滞在していた
1930年代に撮影した写真集

地面の上に裸で寝るナンビクワラの人たちの表情はこの上なく魅力的であり、
それは1万年変わらない人間の姿でもある
人類学者レヴィ=ストロースの基点はおそらくここにあるのではないかと思う。
裸以外の持ち物がない頃から、人類の原点には<女性>の交換があった…
その直感と確信、たったそれだけのことを、
自らの持つありったけの知識とレトリックと強引さで
あれだけの研究に仕立ててしまうところが
レヴィ=ストロースの魅力であり
開いた口が塞がらないほどの壮絶さなのである。

 

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『サンタクロースの秘密』 C.レヴィ=ストロース 中沢新一 著 1995年刊 せりか書房

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サンタクロースの秘密

 

『サンタクロースの秘密』
C.レヴィ=ストロース 中沢新一 著
1995年刊 せりか書房

 

クリスマスの本なので12月5日に出版されています。
赤の帯に「思想のプレゼント」と記して
クリスマスカラーを演出。
そして店頭に山積み。
すると意外と売れて急遽増刷。
でもよく見ると、100ページくらいの小さな本なのに
当時の価格で2000円…
…「思想のプレゼント」はタダではない。

内容は、レヴィ=ストロースと中沢新一の共著、というわけではなくて、
レヴィ=ストロースが1952年にちょっと書いた論文を前半に置いて、
それをもとに後半を中沢がちょっと書いて一丁上がり。。。
それで2000円
なかなか上手い企画だが…
…「思想」は衝動買いするものではない。

この本が20世紀を代表する偉大な人類学者
レヴィ=ストロースを知るきっかけになれば、
という言い方もできるかもしれないけれど、
この本の内容から
『親族の基本構造』や『野生の思考』までは
あまりにも距離がある。

…結論:「思想のプレゼント」というのは、
少なくともこの本の宣伝文句としては不適切。
上手い企画ではあっても良心的とは言い難く、
「思想」と「商売」の橋渡しをするべきところを、
その間の亀裂を際立たせてしまったように感じる。

 

 

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『レヴィ=ストロース』 E.リーチ 著 吉田禎吾 訳 2000年刊 ちくま学芸文庫

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リーチレヴィストロース

 

『レヴィ=ストロース』
E.リーチ 著 吉田禎吾 訳
2000年刊 ちくま学芸文庫

 

神話の「構造」がわかっても神話の面白さはわからないように
レヴィ=ストロースの「構造」だけを取り出しても
レヴィ=ストロースの魅力はわからない。
という「構造」の限界がわかる本である。
この本でリーチの分析の鋭さはすごくよくわかるのに
レヴィ=ストロースの魅力は不思議なくらい伝わってこない。

 

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『赤ちゃんの歴史』 入来典 著  2000年刊 鳥影社

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赤ちゃんの歴史2

 

『赤ちゃんの歴史』
入来典 著
2000年刊 鳥影社

 

16~18世紀を中心にヨーロッパと日本の
赤ちゃんについて書かれたものである。
出産から新生児、乳幼児の扱われ方、
未熟児や奇形児の問題まで取り上げられている。

出産の問題は同時に女性の社会的地位の問題でもある。
生まれてくるときは間引きの対象となり
生まれれば売られる対象となり
産むようになれば命の危険にさらされ
場合によっては見世物にもされ
産ませる産婆は魔女として処刑される
というのがかつての女性の生であった。
今でも地球上のかなりの地域で
それと同じようなことが続いている。

どうして出産という重要な役目を担ってきた女性の立場が、
地球上のあらゆる地域でほとんど普遍的に弱いのか、
あるいは弱くなってしまったのか。
おそらく<女性の交換>と深くかかわるのであろうこの問題は、
解くには大き過ぎる人類史の謎のひとつであるように思う。

 

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『金融の世界史』 板谷敏彦 著  2013年刊 新潮選書

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金融の世界史

 

『金融の世界史 ~バブルと戦争と株式市場~』
板谷敏彦 著
2013年刊 新潮選書

 

まだ貨幣がなかった太古にも金融は存在し、
貨幣がなくなってしまうであろう近未来にも金融は残り続ける。
だとすれば、長い長い人類史の中で
金融が<お金>のことであったのは
ほんの僅かな期間でしかなかったことになる。
<お金>のない「金融」というのは意味として成立しないので、
この場合「金融」とは<数値化された権力>
と 読み替えるのが適切なのかもしれない。
さらにそれは<人の力を集める力、あるいは方法>の
大規模な展開の連続であるとも言えるだろう。
人々のつながる信仰が神を生み、神が金や銀やダイヤモンドや紙になり、
今は電子の相互承認という信用が人々をつなぐようになっている。
人々の気持ちを融かしてひとつにするのが「融」の意味で、
<お金>とはその始まりから終わりまで
ずっと人々の心を象った人類自身の肖像なのだろう。

 

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『出産と生殖観の歴史』 新村拓 著 1996年刊 法政大学出版局

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『出産と生殖観の歴史』
新村拓 著
1996年刊 法政大学出版局

 
古代や中世の日本において
神仏や観念の世界のものであった生殖が
身体の客体化や社会の変化とともに変わっていき、
現代には客体化されたものが科学と国家によって管理されるようになっていく。
その歴史が中国や西欧との関係も交えながら書かれた本である。

 

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『お産椅子への旅』 長谷川まゆ帆 著  2004年刊 岩波書店

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『お産椅子への旅』
長谷川まゆ帆 著
2004年刊 岩波書店

 

ヨーロッパで使われていたお産椅子の歴史を通じて
産婦の身体と社会や医学の関りを研究した本。
議論としてややまどろっこしいところもあるが
事例としてはたいへん興味深いものである。
これは人類にとって「産む」とは何かという
根源的とも言える問いに一歩近づくための旅でもある。

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『人間の経済』 K・ポランニー 著 玉野井芳郎・栗本慎一郎・中野忠 訳 1998年刊 岩波書店

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『人間の経済』
K・ポランニー 著 玉野井芳郎・栗本慎一郎・中野忠 訳
1998年刊 岩波書店

 

自己調整によって動き続ける現代の市場経済を
いかにして再び人間社会に「埋め込む」のかという
壮大なテーマをもったポランニー経済人類学の
総まとめとなった遺稿集である。

ポランニー亡き後、市場経済のグローバルな浸食は続いており、
旧共産圏やイスラム圏、途上国に大きな貧富の断絶を作り、
先進国の中産階級を滅ぼし、
テロとポピュリズムの台頭を招いている。
大戦前のヨーロッパの亡霊が、
地球全土をまさにグローバルに覆っているような不気味さがある。
そして今は白馬の騎士のアメリカはもういない。

 

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