『神話論理』
C.レヴィ=ストロース 著 早水洋太郎・他 訳
2006~2010年刊 みすず書房
これは『悲しき熱帯』と同じように構造主義云々という類の本ではない。
むしろ分析とは正反対の極にある本である。
そして『悲しき熱帯』からずっと続いているレヴィ=ストロースの情熱と饒舌が
とにかく果てしなく連鎖して展開し続ける本である。
書物としての体裁をとっていることが間違いなのではないかと思えるくらいの、
本という四角い箱の壁を渦巻きながら内側から破壊して拡大しようとするような
捉えどころのない力強さ。
その力に振り回されて、この本を読む者は神話に酔う。
地に足のついた整然とした分析の感覚が麻痺して宙に浮いたようになる。
そして夢にまで見るようになって、
夢の中でそれが夢なのか本なのか神話なのかわからなくなってしまうのである。
でも、それでいい。
それでいい。それでいい。と、この本は神話を肯定し続けているのだから。