『グーテンベルクの銀河系』M.マクルーハン 著 森常治 訳 1986年刊 みすず書房  

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グーテンベルクの銀河系1 グーテンベルクの銀河系9 グーテンベルクの銀河系12

 

グーテンベルクの銀河系
M.マクルーハン 著 森常治 訳
1986年刊 みすず書房

 

この本を読んでいる「活字人間」である読者自身の成り立ちを
否定的に追いながら国民国家や電気通信の未来まで予言し、
読者をとても不安定でスリリングな状態にさせる内容である。
線によって導くのではなく点によって浮かび上がらせるような書き方である。
その点の一つ一つが銀河系の星々で、もしかしたら活字の一個一個なのかもしれない。
現時点で気になるのはインターネットと国民国家の関係である。
国家を超えたグローバルな個人の結びつきと
周辺で強固に固まる極端なローカリズム。
国家抜きの世界はネットの部族社会に変わっていくのだろうか・・・

 

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『職業としての学問』 マックス・ウェーバー 著 尾高邦雄 訳 1980年刊(改訳) 岩波文庫

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職業としての学問
マックス・ウェーバー 著 尾高邦雄 訳
1980年刊(改訳) 岩波文庫

 
ウェーバーが1919年にドイツの若者たちに向けて行った講演の記録。
第一次大戦の敗北で著しく疲弊し、それまでの価値観が崩壊したドイツ国民を
ヴェルサイユ条約による制裁が押し潰してしまわんとする刹那に、
スーパー頑固おやじウェーバーの講演は火を噴くような激しさであったようだ。
理を通して話しているが、気持ちは<浮足立つな!落ち着け>である。
しかし怒られようが怒鳴られようが説得を試みられようが、
戦争を止められず、敗戦で悲惨な現状をつくったのは、
そのおやじたちなのであるのだから、
残念ながらどんな熱弁も空しく響いたかもしれない。

 

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『職業としての政治』 マックス・ウェーバー 著 脇圭平 訳 1980年刊 岩波文庫 

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職業としての政治
マックス・ウェーバー 著 脇圭平 訳
1980年刊 岩波文庫

 

1919年にドイツで行われた講演の記録。
第一次大戦敗北後の絶望と無力感、焦躁と憤りのミュンヘン。
行き場を失った人々のさまよえる魂が
根拠のない革命の熱気に飲み込まれていく。
絶望を忘れるためには熱病に罹るしかないかのように。
そこに生れようとする巨大なむき出しの暴力を目の前にして
ウェーバーは語った。
しかし、どれほど論理を研ぎ澄まし倫理を訴えても
それが会場の外にまで響く事はなかった。
悪魔に倫理を対峙させても効果はない。
最終的にヒトラーという悪魔を退治したのは
もう一人の悪魔スターリンだった。
権力が暴力の争奪であることを戦争が証明したのである。

 

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『今こそ読みたいマクルーハン』 小林啓倫 著 2013年刊 マイナビ出版

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『今こそ読みたいマクルーハン』
小林啓倫 著
2013年刊 マイナビ出版

 

この本の出版元であるマイナビ出版(毎日コミュケーションズ)は、
パソコン全盛の頃にはわかりやすく上質なソフトの入門書を多く出版し
好評を得ていた会社である。
現在は電子化の大衆化やネットワーク化が猛スピードで進展し過ぎて
オーソドックスな入門書の出番は少なくなってしまった。
そこで従来の顧客層であるビジネスの分野を中心に
新書をラインナップするようになった。
この本もその流れの中の一冊である。
マクルーハンはビジネスや自己啓発や儲け話に
直接関係する人ではないが、
企業と関係しながら議論を発展させて面も持っていて、
SNSなどの新しいメディアの登場を予言しているようなところもあるので、
やや無理矢理ではあるがビジネス向けの新書に入れられている。
そんなことなのでこの本も
マクルーハンを通して現代のメディア状況を考えるというレベルではなく、
マクルーハンを通して現代の表層を少しなぞる程度の内容である。
しかし入門書としてはこれくらいの方がわかりやすいだろうし、
これくらいの情報があれば知的議論の十分な土台になるだろう。

 

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『新書で名著をモノにする「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」』牧野雅彦 著 2011年刊 光文社  

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新書で名著をモノにする「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」3

 

『新書で名著をモノにする「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」』
牧野雅彦 著
2011年刊 光文社

 

長年電車のつり広告で読者をひきつけてきた出版社ならではの
発想でつけられた軽いタイトルであるが、内容はしっかりとした入門書。
逆に軽いタイトルにひかれてこの本を手にした人は
硬派な内容に頭を悩ますかもしれないが、
その落差こそこの本の企画の狙いなのかもしれない。
さて内容であるが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の本文を
丁寧に解説しながら同時にマルクス、ゾンバルト、ニーチェ、シュミットとの
比較も行われている。
ウェーバーとゾンバルトの微妙な違いを指摘したり、
プロテスタント諸派から『古代ユダヤ教』にも遡ったりと
コンパクトな本であるが読み応えのある内容になっている。
ストライクゾーンの四隅を切れのいい速球で攻めながら
真ん中に深く落ちるカーブが組み合わされているような構成である。

 

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『レヴィ=ストロース―構造』渡辺公三 著 1996年刊 講談社 <現代思想の冒険者たち 第20巻>

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『レヴィ=ストロース―構造』
渡辺公三 著
1996年刊 講談社 <現代思想の冒険者たち 第20巻>

 

この本ではまずこの写真

argobook28_2 わっ、かわいい。お宝写真。

でもこの子が

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となって

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argobook28_4 うそ。しょぼくれた…

と思ったら こんな落書きをしていてyajirushi_kururi_up  argobook28_7
でもこれがボードレールの「猫」という詩に関するのかもしれないもので、
それはヤコブソンといっしょにやった構造分析のはじまりで
そこには音韻、語彙、文法云々の何とかがあるというのは
フランス語を知らないとまったくわからない…

そしてやがてこの気難しそうなじいさんの顔になっていく
argobook28_6というか、枯れていく感じ。

確かに顔の「構造」は同じはずなんだが…
という、ややマニアックな写真が並んでいるあたりからもわかるように、
けっこう詳しい解説書です。

 

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『贈与の研究』 比較法学会 編 1958年刊 有斐閣

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贈与の研究

 

贈与の研究
比較法学会 編
1958年刊 有斐閣

 

日本、英米、ドイツ、フランス、ソ連、中国の 贈与法の比較をした本である
21世紀の今になって、1958年当時の比較に どれほどの意味があるかというのは疑問ではある (もう「ソ連」なんて国も存在しないのに…)

日本法学会の大家が 昭和の中頃に
「贈与」というものを どう考え、どう感じていたか
そのところを少しお伺いしたい…
何故なら、「法」というものが当時の国民意識の大きな流れであり
その反映だからである。
(もちろん固定化された「法」と流動的な国民意識の間には常にズレはあるとしても)

というわけで 来栖三郎大先生が担当された「日本法」の部分から引用

「欧米大陸諸国の贈与法の基礎を為している贈与感は贈与を好意とみている。
これに対して日本の贈与法の基礎を為している贈与感は 贈与を義務義理乃至恩より生ずる義務とみたが故に、 贈与はしようとしまいと自由だ、
それをしてくれたから贈与を受けた者は贈与者に感謝すべきだということにならない
むしろ、義理からにせよ恩からにせよ、 贈与者側で贈与しなければならない義務が
あると意識しているからこそ贈与するのである。
贈与するしないはどうでもいいのではない。
だから贈与は無償だとて軽視すべきではないのである。
その贈与感の下では、未だ有償契約と無償契約の社会的作用の差異に充分考慮が払われない。」
法律は贈与を義務だと見ていた、というのは
現在の感覚からすると驚きであるが
人類学的には
モースが述べた<全体的社会的現象>である贈与の姿そのものである

「それは、宗教的な制度であり、法的な制度であり、倫理的な制度である―
この場合、それは同時に政治的な制度でもあり、家族関係にかかわる制度でもある。
それはまた、経済的な制度である」(『贈与論』序論)

南の島の裸で槍を持って踊っている奴らの掟と
我が日本国の由緒正しい民法が同じだなんて!

そう、南の島の掟にも
何百年か何千年か何万年かをかけた
由緒正しさがある
ということで
大事なのは
そこにみられる普遍性と
それを解釈する人々のあり方。

「どんな時代にあっても活動しているのは、
そしてどんな場所にあっても活動してきたのは、
人だからである。社会だからである。
精神的存在としての、
生身の存在としての人間の感情だからである」
(M.モース『贈与論』)

 

 

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『贈与の哲学』-ジャン=リュック・マリオンの思想-岩野卓司 著 2014年刊 明治大学出版会

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贈与の哲学
-ジャン=リュック・マリオンの思想-
岩野卓司 著 2014年刊 明治大学出版会

フランスの思想家J.-L.マリオンの思想を紹介する講義録

キリスト教系で現象学なので
神がカッコにくくられたり、神に×がついたりします。
さらに神は存在さえしなくなります(キリスト教なのに!)
それでもその先で
もちろん愛で
無限の与えとして………
みたいなことになります。

 

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『贈り物と交換の文化人類学』小馬徹 著 神奈川大学評論ブックレット9 2000年刊 お茶の水書房

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『贈り物と交換の文化人類学』
小馬徹 著
神奈川大学評論ブックレット9 2000年刊 お茶の水書房

 

虫や類人猿のギフトから資本主義の将来までを見渡してコンパクトにまとめた本。
大変広い領域についてわかりやすくまとめてある。
しかし、仕様が70ページのブックレットなので、
中心の理論であると思われる女性の交換とインセストタブーについての説明が中途半端になってしまっているのが残念。

 

 

『評価と贈与の経済学』 内田樹 岡田斗司夫FREEex 著 2013年刊 徳間ポケット

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『評価と贈与の経済学』
内田樹 岡田斗司夫FREEex 著
2013年刊 徳間ポケット

 

気軽に読める対談ではあるが、
多くの重要な視点が示されており豊かな内容になっている。
元気でヒマで生きがいを求めているなら、
若者よ!何でもいい、とにかくまずは人に親切にしてみることだ。
「親切は目減りしない」(内田)のだから、
誰に親切にしたって、君は損もしないし、傷つきもしない。
親切にして、親切にして、あとはただ期待しないでお返しを待っているだけでいい。

「自分が他人からなにをしてもらえるかより先に、
自分が他人になにをしてあげられるかを考える人間だけが、
贈与のサイクルに参入できる」(内田)

それは「何万年も前からはじまっている贈与と反対給付の長いサイクルのひとつ」(内田)なんだよ。
そのサイクルの中でサッカーみたいにパスを回していくんだ。

そして「物をぐるぐる回すことが、結果的に人間的な成熟を可能にする」(内田)んだよ。

わかるかい?

「生きる根拠がないと悩んでいる人たちは、
他人に生きる根拠を与えることでしか、その悩みは解決しない」(岡田)んだよ。

「人間は強いものに導かれて強くなるんじゃなくて、弱いものをかばうことでしか強くなれない」(岡田)んだぜ。
結局は「贈与は<思ったもの勝ち>なんです。
贈与を受けたので、反対給付義務を負ったと思った人間の出現と同時に経済活動がはじまった。

無からでもはじめられるというところが、
経済活動に込められた人類学的叡知」(内田)なんだよね。

といった内容です。

 

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