なつかしさの境界線 ~美山かやぶきの里 北村~

miyakobana

 

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シニアな女性たちに大人気の美山かやぶきの里。

 

ここを訪れる多くの女性たちが

この風景を「なつかしい」と言う。

しかし、観光地巡りをしている今のシニアは、

大半が昭和生まれで、戦後の人たちも多い。

戦後生まれで田舎への疎開経験さえない

今の「おばあちゃん」たちが

江戸時代に建てられた山村の風景をなつかしむのは何故だろう。

 

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もちろん、高度経済成長が始まる前の

シニアたちがまだ幼かった頃の日本には

このような風景が多く残されていたということもあるだろう。

もしかしたら今のおばあちゃんたちが

子どもの頃に遊びに行った

おばあちゃんたちのおばあちゃんたちの家が

この村の風景そのものだったのかもしれない。

そして今の「おばあちゃん」たちは、

素朴でやさしかった昔々のおばあちゃんたちのことを

この場所の風景とともになつかしく思い出すのだろう。

 

 

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地味なアースカラーに埋め尽くされた景色の中に

鮮やかに浮かび上がる赤い鼻緒の下駄。

おばあちゃんのあばあちゃんたちにとって、

これは憧れの一品だったことだろう。

 

 

 

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地味なアースカラーに埋め尽くされた景色の中の

もうひとつの目立つ「赤」がこのポスト。

村の入り口に置かれているものだ。

これも「なつかしい」と言われるが

戦後設置されたものなのでここでは新参者。

 

木と漆の赤と比べると

鉄とペンキの赤は無骨である。

 

本来なら近世の世界に200年後の未来からやってきた

スーパーモダンで異質な存在のはずなのだが

ちゃっかりこの風景に溶け込んでいる。

というか、このポストが村の入り口を守護している

道祖神のようにも見える。

 

このポストは「現在」の世界と「昔々」の世界の境に置かれた

「ちょっと昔」であり、

それは「なつかしい」という単語で

過去と現在の間に一線を引いている。

 

 

 

 

 

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