兵庫県西宮市の西宮神社。
えびす信仰の総本社で、正月の福男競争でも有名です。
「えびす」は複雑な性格の神様です。
日子(太陽神)→蛭子(漂流神)→えびす(漂着神)
→漁労神→海上交通神→商業神→福の神
というような感じに変化して、いくつもの性質が複合して、全部まとめて日本を代表する福の神ということになります。
蛭子(ヒルコ・エビス)はイザナギ・イザナミの子で天照の兄ですが、海に流されてしまいます。
天照が太陽の女神で、蛭子(日子)がそれと対になる太陽の男神であったともいわれています。
女神を信仰する勢力が優勢になり、蛭子は追放され、そして漂着した西宮神社(その前身)に祀られたというストーリーです。
そして昇る太陽と海の恵みが一体となり、富を積んで海を渡って来る海運も一緒になり、漁労や海運の集積が市になり<商売繁盛>につながる。
さらに西宮神社の本殿には天照もスサノオも(後に大国主も)祀られていて、そのために屋根が三つ連なる(三連春日造)という複雑さも加わっています。
拝殿は、戦後の再建にコンクリートが使われているためか、白が目立って、近代建築による和風表現という印象です。
拝殿とともに近代的な印象を受けるのが、その両脇にある青銅の神馬像です。
酒造の名門、「白鷹」の辰馬家によって明治32年に奉納されたものです。
作者は後藤貞行。皇居外苑の楠木正成像の馬を作った馬彫刻の大家です。
流麗で躍動的でありながら、脚部には力強く正確なリズムを刻む機械的な要素も感じます。
それに比べると隣に並ぶ狛犬の表情は牧歌的です。
西洋画に学んだ神馬のリアリズムに対する東洋的な様式美の像と言えるかもしれません。
戦争中の空襲で焼けなかった大門と築地塀は国の重要文化財に指定されている大変重要なものです。
そしてその日本最古の築地塀は日々鳩に啄まれています。
“<えびす>の変遷 ~西宮神社~” への1件のフィードバック