びわ湖大津館は平成10年に移転した琵琶湖ホテルの旧本館である。
旧琵琶湖ホテルは昭和9年(1934年)に、当時の鉄道省によって建てられた「湖国の迎賓館」であり、経産省の認定する「近代化産業遺産」のひとつである。
当時の時代精神を反映しているのか、かなり強引な感じもする鉄筋コンクリートの和風様式である。
近代の技術を駆使して和風が洋風を飲み込んでいるような姿だ。
このホテルが建設された昭和9年は、日本が満州に傀儡国家を建設して周辺国との軋轢が高まっていた年でもある。
にもかかわらず、一方でこのような国際観光の拠点整備も進めていたのであるから、国内向けには威勢のいいことを言いながら、国外の勢力と全面衝突するような事態は考えていなかったのだろう。
根拠薄弱な大いなる楽観と、その先にある必然の挫折。
海外M&Aに失敗して会社の存続が危うくなっている現代日本の重電メーカーと重なる姿である。
急激な近代化とその挫折の名残り。それが「近代化産業遺産」の意味だろうか。
このホテルの3階にある、最も見晴らしのいい貴賓室からは、広々としたびわ湖の景色とともに、よく手入れされた庭が見える。
かつて敵国であったイギリス式の回遊庭園であるが、今では帝国式近代和風建築と折衷されて湖国の観光資本になっている。
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