『大転換』(新訳) カール・ポラニー 著 野口建彦・栖原学 訳

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『大転換』(新訳)
カール・ポラニー 著 野口建彦・栖原学 訳
2009年刊 東洋経済新報社

市場経済というものの発生から現在までをとらえ直し
人間性を根こそぎにしてしまうようなその破滅的な性質について述べた大著。
経済や政治の行き詰まりからファシズムの台頭、そして破滅へ至る社会の姿は
執筆中のまさに目の前で起きている現実であった。
だからこの本は冷静な経済史の分析であるとともに
熱気を帯びたルポルタージュでもある。

市場経済が失敗するように民主主義もまた失敗する。
経済と政治がともに失敗すると
絶望が蔓延しポピュリズムが力を持つようになる。
闇と絶望に支配され、考える力を失った人々は
そこに灯った微かな光に殺到する。
破滅の淵でパニックにも似た饗宴が繰り広げられる。

現在の世界的なポピュリズムの時代に
この本の内容は実践的に再検討される価値があるだろう。
ポラニーが新たな希望のために記した言葉は「忍従」であった。

 

 

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『贈与論』マルセル・モース 著  吉田禎吾/江川純一 訳

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『贈与論』
マルセル・モース 著
吉田禎吾/江川純一 訳 2009年刊 ちくま学芸文庫
有地亨 訳 2008年刊 勁草書房
有地亨/伊藤昌司/山口俊夫 訳 1973年刊 弘文堂(『社会学と人類学1』収録)

 

 

『贈与論』(Essai sur le don)は
フランスの社会学者、人類学者である
マルセル・モース(Marcel Mauss)によって、
1924年に発表された人類学の古典である。

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「友には友らしくしなければならず
贈り物には贈り物を返さなければならない。
笑いには笑いで
嘘には欺き応じなければならない。」
スカンディナビア神話『エッダ』より

 

 

 

り物の歴史は神話と共に古い。
<贈るー受け取るー返す>という一連の義務。

「贈られたものに潜むどんな力が、受け取った人にその返礼をさせるのか」

その力は物に宿る呪力(マナ)として、
土地から生まれその土地に還る生命の原理として、
神話の掟や神との約束として、クラやポトラッチのような文化として、
富める者の名誉として、人々の倫理や道徳や法として、
人々とともに常にそこにあり続けているものである。
それは様々な側面を見せる「全体的社会的事象」であり、
人から人へ連鎖し循環している。
「返す」は「贈る」から力を与えられ、その「贈る」に潜む力も、その前の「返す」によって与えられていた力である。
はその社会の一員として、その循環を繋いでいる。
贈与とはモノやカネのことではなく、あちらからこちらへ、
こちらからそちらへ、あるいは今からその先へ、
またはその先からずっと昔へ、循環する力、運動そのもののことであり、
その運動が回転する独楽のように社会を安定させてきたのである
(とまでは明確には書かれてはいないが…)
では、なぜその運動をするのか。
それは<われわれの本性は、運動のうちにある>
(パスカル『パンセ』) からなのだろう。

モースはまた「諸社会は(中略)どれだけ互いに関係を安定させ、与え、
受け取り、お返しすることができたかに応じて発展した」として、
バラバラの個人が利得だけを求めて争い、人間が「経済動物」になってしまう社会には我慢がならなかったようである。
「交際するためには、まず槍から手を離さなければならない」
それが人類の知恵である。

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『マリノフスキー日記』 B.マリノフスキー 著 谷口佳子 訳 

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『マリノフスキー日記』
B.マリノフスキー 著 谷口佳子 訳
1987年刊行 平凡社

 

 

鋭く精緻に書き上げられた『西太平洋の遠洋航海者』からは想像できない、
そこに至る途上の苦悩の日々の記録である。
日記の中のマリノフスキーは薬漬けで、恋愛小説に耽溺し、妄想して周囲に悪態ばかりついている。

 

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『KURA~貝の首飾りを探して南海をゆく』 市岡康子:著

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『KURA~貝の首飾りを探して南海をゆく』
市岡康子:著
2005年 コモンズ:刊

 

 

 

1971年に制作・放映されたドキュメンタリー番組
『クラ―西太平洋の遠洋航海者』の内容を書籍化したものである
(テレビシリーズ「すばらしい世界旅行」より)。

大変評価の高い番組ではあったが、
それでも製作から30年以上経った2005年になってから書籍化されたというのは
かなり特異なこと、というか本の売れない時代に
こんなにマイナーでピンポイントな内容のものが出版されるというのは、
ほとんど奇跡的なことではないだろうか。

 

番組は3年をかけて制作され、クラの一部始終を的確にとらえたもので、
20世紀初頭に記されたマリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』の世界が、
カラーフィルムで鮮やかに生き生きと映し出されている。
書籍には、映像にならなかった裏話も多く書かれてあり、これも大変興味深い。
マリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』の序文に示された研究姿勢に、
ドキュメンタリー制作者たちが強く触発されたこと、
現地の人々との文化的な違いによる心理的葛藤などの生々しい記録である。

マリノフスキーの研究を補完するものとして、
その隣に並べておいて、その雰囲気を感じたい本である。
民族誌は遠い国の昔話ではなく、我々の隣人のことであり、
我々自身の中にあるものである。

 

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『マルセル・モースの世界』 モース研究会 著

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『マルセル・モースの世界』
モース研究会 著
2011年刊 平凡社新書

 

 

「贈与」とは、贈与されるモノのことではなくそこに加えられた力と

その方向性のことである。

そのモノの上にも横にも中にも何もなくても力はそれを動かし続ける。

モースという人の精力的な活動について読んでいると、

その活動がモース自身の意思だけではなく、

それを越えた力を加えられることによって動いていたような気がする。

まるでモース自身が大きな力を加えられた「贈り物」であったかのようにである。

 

 

彼は、自分に加えられ、与えられた力を素直に受け入れ精一杯行動した。
時代は晩年の彼を絶望的な状況に追い込みはしたが、

モースの思想や研究やその行動は、 その時代の壁を軽々と越えるものになった。

モースの贈り物、あるいはモースという贈り物は

現在も受け継がれ広がっている。

人は限りある存在でありながら、その限界をはるかに越えたものを志向し、

それに挑む。
全身全霊を傾けて。

 

そこには信念があり、その信念が個人の損得を越えたものであれば、
その信念は個人の枠を越えて強く大きな流れを作り出す。

 

 

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『西太平洋の遠洋航海者』 B・マリノフスキ 著 増田義郎 訳

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『西太平洋の遠洋航海者』
B・マリノフスキ 著 増田義郎 訳
1967年刊行 中央公論社 『世界の名著59』収録 (抄訳)
2010年刊行 講談社学術文庫 (抄訳)

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『西太平洋の遠洋航海者』(Argonauts of the Western Pacific)は
1922年に発表された、人類学者マリノフスキ(Bronis?aw Kasper Malinowski)の主著である。

 

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『野生の思考』 C.レヴィ=ストロース 著

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原題は La Pensée sauvage
本国での発表は1962年である。

とても饒舌な本である。
そして難解でありながら単純でもある。

要するに、
<現代的っていうか、科学的っていうか、
同じものをダーッと作る「栽培された思考」もいいんだけれど、
そのすぐ隣には 色とりどりに咲き乱れる「野生の思考」っていうのもあって
それもちゃんと見た方がいいよ。
ほら、きれいじゃん。この表紙の野生のパンジーみたいに。>
なのだけれども、
人によっては「器用仕事(ブリコラージュ)」や「隠喩」
あるいは「カレイドスコープ」や「鏡」といった部分を中心に
読んでいくかもしれないし、
前著から続く「トーテム」や次に続く「神話論理」と関連付けに
重点を置くかもしれない。
全部まとめて「文化相対主義」と結論付けてもいいのだろう。
三色スミレの「構造」と文化の比喩から人間の思考を探る、というのもありだろう。
割と自由に読んでいいような気がする。

このさまざまなキーワードがいくつも重なり合いながら、
部分と全体が呼応していく面倒くささみたいなものが
(それが音楽的といわれるところなのかもしれない)
たぶんこの本の身上なので、
それをわかるためには
<どこから読んでもいいけど全部読んでね>
なのだと思う。
なにしろ、表紙の図柄の謎解きが
最後の付録の3ページに書かれていて
それも回答はなくてヒントだけ、
答えは本文の中で探ってね、
というような構成なのだから。

 

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『野生の思考』 C.レヴィ=ストロース 著

大橋保夫 訳 1976年 みすず書房

 

 

以下、本文より・・・

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『近代化のなかの誕生と死』 国立歴史民俗博物館+山田慎也 編

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日本国内における誕生と死に関する人々の認識の変化を
明治から昭和にかけての儀礼の変化を通して考える論文集。
国立歴史民俗博物館の展示の再構築に関するフォーラムの内容を
書籍化したものである

 

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『近代化のなかの誕生と死』

国立歴史民俗博物館+山田慎也 編
2013年刊 岩田書院

 

以下、本文より・・・

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