1974年竣工の最高裁判所。「奇巌城」などとも揶揄される
極めて特異な外観の建物である。
極端に窓が少ないためか
厳かで脱出不可能な牢獄という感じもする。
とにかく石の塊としての存在感に圧倒される。
ところが設計者の岡田新一の論文を読むと、
この設計は閉鎖性ではなく流動性を求めたものらしい。
「この空間は向かい合う2方向は壁によって外界から隔てられるが、
それと直角の2方向は開口―窓ではなく―によって
外部空間に連続する。」
さらにそれは
「日本建築における内外空間の流動的関係に類似する」
ということである。
確かに正面から見て左手の正面入口の先は、
巨大な2枚の壁で区切られた空間であり、
そこにあるホールは巨大な吹き抜け空間であり、
さらに奥の大法廷にも巨大な天窓があるということなので、
空間の設計としては開かれているのである!
何があっても壊されない最高の法の支配力の象徴
にしか見えないこの建物は「胎内的な安堵」のある
「古く忘れられた感覚を呼び醒す」ことを
発想の原点にもっているというのである。
このどこから見ても重苦しい石の塊は、もしかしたら
中の人にとっては、意外と居心地のいいものなのかもしれない。
カッパドキアの洞窟住居のように・・・
・・・それこそまさに<奇巌城>であるが・・・
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