『大正デモグラフィ』速水融・小嶋美代子著 2004年 文春新書

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大正時代の貴重な人口統計から、当時の社会状況を考える本である。

 

大正は、明治と昭和というふたつの長く激動した元号に挟まれた、

あまり目立たない時代である。

しかし文明開花の日本が真に都市化と近代化に

塗り替えられたのがこの短い時代のことである。

そして大正元年は1912年、既に20世紀に入っていた。

 

この時期、日本は農業を基盤とした社会から

工業を基盤とした社会に転換している。

全国に鉄道網が完備され都市の人口は急激に増えた。

人々は新聞や雑誌を読み都市の一個人となる。

夜が明るくなり伝統的な家族像がかすれてゆく。

 

国家が都市の個人と核家族を中心に

再編されてゆく時代である。

もちろんそれがすべてになったわけではないが

その基盤は出来上がっていた。

 

今考えるとこの時から昭和の総動員戦争への歯車が

逆戻りできない形で確実に回されていったように思える。

 

 

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