賄賂など広義の贈与を別として、
お祝いなどの贈り物に現金を使うという風習は、
日本とアジアの一部だけに見られるかなり特殊なものです。
その特殊な風習がいったいどのようにして始まったのかということに
定説はありませんが、中世には貨幣が贈与物として使われていたとされます。
しかし、その時代には市場経済と贈与経済は未分化でしたから、
貨幣も今の流通を前提とした「現金」というよりも
希少性のある「宝物」という感覚だったのかもしれません。
その後、流通や市場の発達とともに
貨幣の「現金」としてとしての扱いが大幅に増えても、
「お祝い」としての貨幣は残り続けました。
お祝いとしての貨幣は長い歴史の底流で延々と生き残り続けた風習であり、
経済史のシーラカンスと言えるのかもしれません。
逆に言えば、お金はお金になる前から<お祝い>だった、
ということになるでしょう。