法隆寺の数ある国宝の中でも
最も有名なのもののひとつ五重塔。
その基壇から上の高さは31.5mである。
1300年の歴史や古代の技術力云々を考えなければ
高層建築を見慣れた現代人の目には小さく見える。
別に高さを競うようなものでもないが
TDLのシンデレラ城の51mや
USJのホグワーツ城の47.5mよりも
かなり低い。
これは1/2サイズの精巧なミニチュアです
と
笑顔の素敵なガイドさんに説明されたら
ああ、そんなものかなぁ、と
信じないまでも
なんとなく納得してしまいそうなくらいの
スケール感である。
この法隆寺を拝観するときには三か所で
チケットを切ってもらうのだが
それに使われているのが
国宝級とは言わないまでも
近代産業遺産的な風格のある改札鋏である。
ここから銀河鉄道に乗って行けそうな
古の世界の入り口にふさわしいアンティークな小道具だ。
ここでは消火栓も
古代のシルクロードを渡ってやってきた神殿の柱を思わせる
年季の入り方である。
この先に玉虫厨子や百済観音といった
日本を代表する文化遺産を数多く収めた宝蔵がある。
そして夢殿の入り口。
ここにも改札口がある。
切符を切ってくれるのは、もちろん係りのおじさんなのだが
そのシルエットは五重塔の支えになっていた鬼の姿に似ている。
古代の呪術的な世界への入り口を守る番人にふさわしい。
21世紀の建築の規模から見下ろせば
法隆寺はもはや小さな箱庭になってしまっているのかもしれない。
でもここは敷地全部が貴重な文化財で覆いつくされた
ありがたくリアルなアンティークパークである。
それは今時のテーマパークが何百億円かけても
決して真似することのできないものだ。
とはいうものの
日本政府をはじめとする現代の文化財保護のパトロンたちの
ふところ具合は少々寂しい。
このままではアンティークは
リアルな廃墟になってしまうかもしれない。
このあたりで聖徳太子に
ハリーポッターとコラボしてもらい
ARやVRやプロジェクションマッピングで
玉虫厨子の秘められた古代の魔術を
開放してもらうというくらいの
夢見の必要があるのかもしれない。
ここは1300年分のポテンシャルが眠る
観光パワースポットである。
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