隅田川につながる運河である小名木川に架かる萬年橋。
今から150年以上前、まだこの橋が木製のアーチだった頃、
この場所は浮世絵に描かれて人々を魅了した江戸の名所であった。
(葛飾北斎 富嶽三十六景「深川萬年橋下」)
(歌川広重 名所江戸百景「深川萬年橋」)
北斎が1830年代、広重が1850年代のものである。
大胆な構図に青い空と水面、人々の往来、そして冨士。
ともにジャポニズムの代表的な浮世絵であり、
ここが江戸の人々にとって重要な水路であり
親しみのある場所であったことが感じられる。
浮世絵を通してかつて世界的に有名であった場所ともいえる。
水路としての実用性と、風物としての情緒性が
一体となって庶民の生活に溶け込んでいた場所といえるだろう。
現在の橋は、昭和の初めに震災復興計画の一部として
架け替えられたもので
隅田川周辺のレトロモダンな風景のひとつである。
浮世絵のような富士山は見えないが、
ここからは「ケルンの眺め」と呼ばれる
清洲橋の流麗な姿を見ることができる。
今は北斎の浮世絵ほどの交通量はなく、
小名木川を船が通過することもないので、
わりと閑散としていて
タクシードライバーや水鳥たちの休憩所や
ドラマの撮影場所として名所になっているようである。
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