障害者の就労支援について その5  ~厚労省資料より~

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一般就労と福祉施設での就労の間には大きな賃金(工賃)の開きがある。

では、同じ福祉施設の中ではどうであろう。

 

まずA型であるが、こちらは平均賃金が著しく低下していて、

A型の成立要件である最低賃金さえ確保できていない状況である。

そして平均値である69458円よりもかなり低い40000円あたりに

最も事業者が集まっている。

A型事業者数の急増に伴い、残念ながら収益力の低い事業者の比率が

高まってしまったと考えるのが妥当だろう。

 

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では「B型」の方はどうだろう。

こちらは徐々にではあるが確実に工賃は上昇してきている。

工賃が2万円や3万円を超えて

下位のA型を凌駕する勢いのB型も増えつつある。

ただ、1万円や5千円のあたりにあるグラフの山は

働きに応じた報酬というより

切りのいい金額のおこずかいという感じがあり

その数字に合わせるために職員さんが動いているという印象もある。

 

上位25%と下位25%の間に工賃5倍の開きがあるのも

気になるところである。

 

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賃金が10万円を超える<精鋭A型>の着実さ。

A型の巡航スピードに到達できないまま失速している<準A型>の増加。

B型の壁を突破している<超B型>の勢い。

就労よりも生活介助の比重が高い<生活B型>の大きな塊の存在。

といったものがこの二つのグラフから見て取れる。

単純なAとBでは割り切れない部分も多そうなので

制度設計の見直しが必要になってくるかもしれない。

 

そしてこうした現実に即した手堅い制度設計ができるかどうかが

官僚本来の腕の見せ所でもあるのだろう。

 

 

 

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『障害者の就労支援について』(厚生労働省諮問委員会資料)

 

 

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障害者の就労支援について その4  ~厚労省資料より~

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次に障害者の賃金(工賃)について見てみると、以下のようになっている。

 

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就労者の数が前の資料と違うし、数字の書き方にも問題のある表ではあるが

ここでは賃金面を中心に見ることにする。

 

一般就労:18万円、A型:6.9万円、B型:1.4万円である。

一般とB型では10倍以上の開きがある。

一見ひどい格差があるように見えるが、

「障害」というものの幅の広さを反映しているとも言える。

 

一般就労の中でも「身体」と「知的」と「精神」では

賃金に大きな開きがある。

サービス化や情報化が進んでいる現在の社会では、

「身体」より「精神」のハンデの方が大きく

「知的」のハンデはさらに大きくなる傾向があるのかもしれない。

またコミュニケーション能力という点からも

その差が生じやすいと思われる。

 

 

 

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『障害者の就労支援について』(厚生労働省諮問委員会資料)

 

 

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障害者の就労支援について その3  ~厚労省資料より~

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続いて「就労<移行>支援」事業の現状であるが

ここにやや問題がある。

移行率が4割を超える優秀な事業者が25%ある反面

3割以上の事業者は1人も移行できていない。

そして成果がゼロでも倒産することはない。

難しいのは受け入れる企業の側に問題があるのか

支援事業者に問題があるのかの判断である。

 

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では、「就労<継続>支援」の場合はどうか。

「A型」も「B型」も一般就労を目指すのが名目にはなっているが

現状では一般就労への直接の移行は極めて少ない。

 

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なぜ少ないかというと

まず、本気で移行を目指す人は「移行支援」を利用するだろうから

「継続支援」から直接の移行が起きにくいということ。

次に、A型の場合は、自らの生産体制を保つ必要もあって

利用者(スタッフ)の移行(転職)に多くの力は使えないということ。

B型の場合は、そもそも雇用契約そのものが困難

とされている人たちの組織なので移行へのハードルが高いということ。

 

また、福祉の枠の中で生活してきた人たちにとって

一般企業への就職は心理的な面でも困難が伴う。

 

 

 

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『障害者の就労支援について』(厚生労働省諮問委員会資料)

 

 

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障害者の就労支援について その2  ~厚労省資料より~

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では、就労の状況はどうなっているのか。

 

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就業者数は年々増加しており、現在40万人以上の障害のある人たちが

一般企業で働いている。

ただ、何らかの障害をもつ人は788万人とされているので

雇用率としては決して高いとはいえないだろう。

また在宅の人の割合は4割を超えており

積極的な社会参加と受け入れ態勢作りが望まれるところだろう。

 

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それにしても、就職でも学校でも在宅でもなく

福祉サービスの利用者でもない人たちは

どこにいるのだろう。

 

総数788万人-(在宅324万人+就職42万人+学校20万人+福祉サ20万人)

=382万人!!

 

 

 

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・障害者の就労支援について その4

 

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障害者の就労支援について01_03

『障害者の就労支援について』(厚生労働省諮問委員会資料)

 

 

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障害者の就労支援について その1  ~厚労省資料より~

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厚生労働省が平成27年7月に公表した資料から

障害者雇用の現状と問題点について考える。

 

法律で定められた就労系障害福祉サービスには3つの形がある。

「移行支援」と継続支援の「A型」「B型」である。

 

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「移行支援」は一般企業に就職するための職業訓練のことで

これはわかりやすい。

次の「A型」「B型」は少々ややこしい。

そもそも「就労<移行>支援」と「就労<継続>支援」の

移行と継続の違いがわかりにくい。

これがわかりにくいのは、この二つにおいて

「就労」の意味が違うからである。

「就労<移行>支援」の場合の「就労」は一般企業で働くことを意味し、

「就労<継続>支援」の場合の「就労」は

(現状では)福祉法人内で働くことを意味する。

「移行支援」は移行までの間を支援するのであるが

「継続支援」はずっと支援が続くのである。

 

(もちろん名目上はどちらも一般就労を目指すことにはなっていて、

「継続支援」の本来の意味は「移行支援の継続」であると思われる)

 

では「A型」と「B型」はどう違うのか。

「A型」は雇用契約を結ぶ

「B型」は雇用契約を結ばない

である。

だから「A型」では労働に対して「賃金」が支払われ、

「B型」で支払われる場合は「工賃」と呼ばれる。

 

 

 

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『障害者の就労支援について』(厚生労働省諮問委員会資料)

 

 

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旅の始まる部屋 ~長浜鉄道スクエア~

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長浜鉄道スクエア19

長浜鉄道スクエア16 長浜鉄道スクエア20 長浜鉄道スクエア17

 

長浜鉄道スクエアは現存する日本最古の駅舎である

旧長浜駅舎をベースに作られた鉄道記念館。

建てられたのは明治15年である。

派手さはないが小ぢんまりとして居心地のいい場所だ。

 

長浜鉄道スクエア23 長浜鉄道スクエア21 長浜鉄道スクエア30

 

止まった時計、開かない窓、灯らないランプ。

切り取られた線路、空っぽの機関車、行先のない改札。

切符は発行されず、信号機が上がることもない。

 

今や誰の懐かしさより古くなった、明治15年の記憶。

 

長浜鉄道スクエア9 長浜鉄道スクエア15 長浜鉄道スクエア2

 

でもここで感じるのは陰鬱さよりも安堵感である。

 

出発の時間がない駅は、時に急かされることがない。

列車が来ることのない駅では、何を待つこともない。

 

長浜鉄道スクエア14

長浜鉄道スクエア4 長浜鉄道スクエア5 長浜鉄道スクエア6

 

だから焦らなくていい。

ただ気が向いたときに

自分でゆっくり動き出せばよいのである。

 

 

浄財の仕掛け ~建部大社~

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建部大社39

建部大社27 建部大社21 建部大社3

 

近江国一之宮の建部大社は

白鳥になった神話のヒーロー、日本武尊をお祀りする神社です。

境内にはそのタケル物語が華麗なイラスト付きで紹介されています。

 

建部大社28

建部大社42 建部大社41 建部大社40

 

由緒正しい佇まいの神社としては大胆なイメージ戦略です。

 

そしてこの神社の奥にはもうひとつユニークな仕掛けがあります。

 

建部大社37

建部大社35 建部大社34 建部大社33

 

それがこれ、お賽銭スライダー!

 

この端に硬貨を差し込むと

転がって三方の上に落ちる仕掛けになっています。

 

その先にあるのは由来不明の菊花石。

 

ヤマトタケルとはおそらく何の関係もなく、

たぶんちょっと珍しい石というだけなのですが、

それが柵や鳥居といった仕掛けで一旦区切られ

スライダーという仕掛けで再びつながれると

浄財を受ける神様に変わります。

 

聖なるものとは

断絶と再接続の回路に参加することで見えてくる

マジカルな体験なのでしょう。

 

 

建部大社30

 

 

 

堅牢なオマージュ ~甲賀流忍術屋敷~

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忍者屋敷51

忍者屋敷15 忍者屋敷52 忍者屋敷12

 

戦の時代が終わって100年後、

元禄時代のおそらくはとても平和だった山里に

この忍術屋敷は建てられた。

 

それから300年、

その屋敷は同じ場所に

しっかりと建っている。

 

忍者屋敷11 忍者屋敷50 忍者屋敷14

忍者屋敷23 忍者屋敷38 忍者屋敷16

 

今の時代から考えると築300年の個人住宅が

こんなにしっかり建ち続けているというのは驚きだ。

 

忍者屋敷34

 

どんでん返しや落とし穴といった仕掛けは

300年間揺るがない堅牢な土木建築の基盤があってこそ

可能になった応用技術といえる。

その基盤技術は寺社建築の1000年、

城郭建築の数百年に通じるものだろう。

 

では平和になった元禄の時代に

時代錯誤の戦国仕様のこのような建物が

建てられたのは何故だろう。

 

忍者屋敷43 忍者屋敷9 忍者屋敷44

 

それは300年前の甲賀望月一族による

祖先の技術と栄光に対するオマージュだったのではないだろうか。

平和になり失われ忘れられそうになっていたものだからこそ

彼らは持てる技術と財力のすべてをここに注ぎ込んだのではないだろうか。

それは自らのアイデンティティの大切な確認作業でもあっただろうし、

どうしても後の時代に残しておきたかったものだったのだろう。

 

そこには寺社への信仰と同じような祖先への信仰があったのだろうし

だからこそ300年も建ち続けているのだろう。

 

忍者屋敷18 忍者屋敷10 忍者屋敷49

 

(もしかしたら、薬売りで裕福になった当主の

単なる道楽だったのかもしれないが…)

 

忍者屋敷39

忍者屋敷2 忍者屋敷3 忍者屋敷4

 

その300年前の堅牢な志は受け継がれ

甲賀には今も小さな忍者がたくさん駆け回っている。

 

 

忍者屋敷41

 

 

 

NPO法人 滋賀県社会就労事業振興センターさん

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滋賀県草津市の滋賀県社会就労事業振興センターさんを

訪問させていただきました。

 

振興センター1

振興センター2 振興センター5 振興センター4

 

振興センターさんでは、障害のある方々の雇用を促し

地域の活性化を目指して活動されています。

「働くことを施設の中だけで終わらせない」で、

その先にある、誰もが働きながら幸せである社会を

目標に掲げられています

 

また、滋賀県「働き・暮らし応援センター」さんの

バックアップもされています。

 

滋賀県内の施設情報や国の施策に精通されているので、

多くの有益な示唆をいただくことができました。

 

 

振興センター8滋賀県社会就労事業振興センターさんのHPはこちら

 

 

 

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障害者の就労支援について01_03

『障害者の就労支援について』(厚生労働省諮問委員会資料)

 

 

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