京都駅ビル大階段の巨大なクリスマスツリー。
吹き抜けの広大なスペースを貫いて立ち上げられています。
大階段もクリスマスデザインに彩られ
ガラスの壁面にも巨大ツリーの姿が映り込んで、
訪れる人たちを華やかに圧倒します。
・・でもどうやって階段の上に運んだんだろう?
空中経路の飾りはシンプルでスタイリッシュなもので
高所で閉所で緊張感のあるこの空間によく似合っていました。
日本橋川をまたぐ日本橋の橋とその橋をさらにまたぐ首都高速道路。
この光景はひどい景観破壊の例としてよくあげられる。
もっともな見方だろう。
しかし、見方を変えれば日本国道路元標のあるこの場所に
高速道路網が重なるのは当然のこととも思える。
ちょっとカッコよく言えば、
ここはレトロとモダンに更なるモダンが立体交差する場所。
<時と道の交差点>になっているとも言える。
独特の景観だ。
少なくともこの高速道路が感じさせる威圧感は、
戦後日本の成長への意志の強烈な表現であること確かだろう。
思えばこのドラゴンにしか見えない橋の上の麒麟像の
強引な和洋折衷ぶりもまた
明治日本の近代化への強烈な意志の表れだったはずだ。
日本橋から各地へ飛び立つイメージのために
つけられたという麒麟像の翼。
そのイメージの通りに高速道路は飛躍的に日本中にひろがった。
そしてその高速道路に乗れば羽田空港までは20分。
そこからは金属やカーボンで作らた
電子制御のドラゴンたちが世界中に飛び立っている。
水の道、土の道、風の道は重なって繋がって
そこにある。
永代通りと中央通りが交差するお江戸日本橋交差点の角、
地下鉄日本橋駅の上という好立地に
滋賀県のアンテナショップ『ここ滋賀』はあります。
普通、アンテナショップはビルの一画を借りる場合が多いようですが、
『ここ滋賀』は大胆にも角地の2階建てのビルを
まるごとショップとレストランにしています。
1Fはご飯にお茶、お酒に鮒ずし、湖魚・野菜・近江牛、菓子類、
工芸品にびわこ文具などバラエティに富んだショップです。
屋上テラスには滋賀県在住の切り絵作家
早川鉄兵さんの作品をモチーフにした装飾があります。
バックにある日本橋の繁華な通りと、
絵本の世界から抜け出してきたようなのんびり顔の鹿。
ユニークな対比です。
2Fはレストラン『滋乃味』(ジノミ)。
35席くらいのコンパクトな店内ですが、
角地で窓が大きく取られているので明るく解放感があります。
滋賀を代表するグルメ、鮒ずしの3種盛りと近江牛。
「鮒ずし」と一口に言っても地域によりお店により、
味わいは変わりますが、独特の発酵臭は共通です。
ファストフードとジャンクフードで生活していると、
発酵食品の風味への感度は下がります。
それはおそらく<近代食>と<前近代食>の違いからくるものでしょう。
<近代食>は食材を腐敗や発酵から遮断しながら
画一的に大量生産する工業技術です。
<前近代食>は遮断できないものと共存して
利用もしていた時代の名残。伝統的で古臭くて臭いのです。
石山寺の秋のライトアップ「あたら夜もみじ」
<あたら夜>は「可惜夜」と書き、読みは「アタラヨ」。
明けてしまうのが惜しい夜、という意味です。
今年は山門の仁王像もカラフルに照らされていました。
残念ながら短い紅葉の盛りは既に終わってしまった後でした。
しかし、ライトアップの強い光は、枯れることも散ることもなく
1000年の塔を照らしていました。
こんなに赤くすることもないだろう、
と思わないでもありませんが、
暗い夜空を背景にこの色が
良く映えるのは確かです。
このままキラキラの電飾をつけて「国宝ツリー」か
「石ナリエ」にしてしまいたいほど派手です。
仏教寺院なのでクリスマスとはいえないでしょうけれど
闇に浮かびあがる極楽浄土と言えばそれらしい。
そして天然記念物の巨大な岩に秘仏のスペクタクルを映しだす
プロジェクションマッピングも加えたいところです。
導入部の仁王門には動きを加えて驚きをつくる、
参道にも仕掛けをして次第に盛り上げる。
そうすれば特別拝観料を2倍の1200円にしても
納得の御利益になります。
水に映った景色には透明感と深みがあり
夜の向こうの世界という感じです。
本堂の紫式部人形は特別なライトアップをされていなくても
「向こうの世界」が突然現れたように感じられて
いつも少々驚きます。
・・・明かりがついていなければ多分もっと驚くでしょう・・・
夜空に向けられたサーチライトも、
こちらの世界と向こうの世界をつなぐ
光のエレベーターのように見えました。