『永遠平和のために 啓蒙とは何か 他』 カント 著 中山元 訳 2006年刊 光文社 

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永遠平和のために 啓蒙とは何か 他
カント 著 中山元 訳
2006年刊 光文社

 

カントの『永遠平和のために』が出版されてから220年以上が経ち、
世界は多分、当時のヨーロッパよりずっと平和になっている。
厳しい緊張が絶えず発生してはいるものの、
今のところ国家間での戦争らしい戦争はほとんど起きなくなっている。
しかし、現代は220年前には全く予想できなかったほど
複雑怪奇な姿になっていてる。
皮肉にも、カントが戦争を抑止する力になると語った「商業の精神」が原因で、
カントが批判した常備軍とは全く異なる人たちによる殺し合いが起きている。
世界的な貿易の広がりは、世界的な豊かさと世界的な貧しさと、
世界的な武器の流通と、世界的な不安定を生んでいる。
人間の利己心はカントが考えていたよりはるかに巧妙に<進歩>し続けてきたのだ。
にもかかわらずカントは正しかった。
「われわれは〔人間は善き存在になりえないという〕
この絶望的な結論に到達せざるをえない」
と述べていたのだから。
そして、にもかかわらずカントの以下の哲学的結論は変わらないだろう
「法にたいする尊敬の義務を
決して踏みにじらないことを心から確信している人だけが、
人間愛の営みにおいて
慈善の甘美な感情に身をゆだねることが許されるのである。」

 

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『啓蒙都市ウィーン』 山之内克子 著 2003年刊 山川出版社

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『啓蒙都市ウィーン』
山之内克子 著
2003年刊 山川出版社

 

ウィーンは中世と近世・近代への変化が 際立ってダイナミックに起こされた場所であったようだ。
カトリック権力の防壁としてウルトラ保守な宗教都市となり、
戦争に敗れて啓蒙・解放のハイパーリベラルな都市に作り変えられた。
それもマリア・テレジアとヨーゼフ二世という二人の専制君主によって。
そして生まれたのが贅沢と享楽と傲慢の市民階級である。
市民階級の誕生とは、無数のクレイジーで小さな王様たちが
都市に放たれる波のことだったのかもしれない。

 

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『啓蒙の世紀と文明観』弓削尚子 著 2004年刊 山川出版社

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啓蒙の世紀と文明観
弓削尚子 著
2004年刊 山川出版社

「新大陸」の発見により、人間は神の知識を超えた。
用済みになった神は世界の片隅に追いやられ、人類は勝手に大いに繁栄した。
人類は新たに得た知識で夢中になって人類自身を分類し、分析し、
バラバラに分解した。
そしてさらに新しい知識を得て、
人類自身を完全に消滅させることを思いついた。
それが20世紀のことである。
世界のはるか片隅に追いやられた神は、
人類の成功を大いに祝福し、そして密かに呪い続けている。

 

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『定本 想像の共同体』 B.アンダーソン 著 白石隆・白石さや 訳 2007年刊 書籍工房早山 

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定本 想像の共同体
B.アンダーソン 著 白石隆・白石さや 訳
2007年刊 書籍工房早山

ナショナリズム研究に関する基本であり、極めて強力な書物である。
様々な切り取り方ができる厚みをもった研究であるが、
最も基本になるのは言語と帰属意識に関する部分であろう。
不安定で変化の著しい俗語が、書き言葉として固定され、
それが印刷物として流布することで人々の間に「国民」という意識が
抜き差しならないものとして浮かび上がる。
そこでは個人のアイデンティティと国民としてのアイデンティティは、
コインの表裏のように一体である。
「母の膝の上で出会い墓場にて別れるまで、
その言語を通して過去が蘇り同胞愛が想像され
そして未来が夢見られる」のであり、
そこに祀られた国家という観念のために
「途方もない数の人々がみずからの命を投げ出」してきたのである。

 

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水の落とし穴 ~琵琶湖大橋周辺 夏~

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夏空の風景が美しいびわ湖。

シーズンにはレジャーを楽しむ多くの人で賑わいます。

 

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ヨット、釣り船、モーターボート、水上オートバイなど、賑わい過ぎて混み合っています。

 

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釣りをしている人から見れば、モーターボートは静けさを打ち破る無法者で、逆から見れば多数の釣り船はごちゃごちゃした障害物に見えているしょう。

 

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びわ湖で起きる船舶・水難事故は、警察に届けられたものだけで年間60件以上。

年間と言っても夏場が中心になるでしょうから、シーズン中は毎日びわ湖のどこかで事故が起きているという感じになるでしょう。

 

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年間5000件を超える県内の交通事故から見れば、小さな数字なのですが、水の事故には大きな落とし穴があります。

 

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水の事故では、亡くなる確率が跳ね上がるのです。

年間5000件の交通事故で、亡くなる方は50名程度ですが、年間60件の船舶・水難事故の場合、亡くなる方は10名を越えます。

交通事故で亡くなるのは1%、水の事故では50%なのです。

 

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安全意識と安全装置の違いで、事故の様相は大きく変わります。

一見何もない開放的で広いびわ湖の水面ですが、技術の過信やちょっとした油断によって、そこが大きな落とし穴に変わることもあるのでしょう。

 

 

ある富豪の生涯 ~大阪市中央公会堂~

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明治の終わり頃、国のあらゆる機能が帝都東京に中央集権していき、大阪の誇った「天下の台所」機能も相対的に影が薄くなってきていました。

 

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その大阪の町おこしに、現在の貨幣価値で数十億円をポンと寄付したビッグなお金持ちがいました。

 

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「北浜の風雲児」と言われた株式の仲買人岩本栄之助という人です。暴落時に徹底的に株を買い進めるという相場師らしい大胆な人でした。

 

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大阪市公会堂(中之島公会堂)は、その寄付で建てられました。

 

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設計は岡田信一郎と辰野金吾という、近代日本の建築を代表するこれもビッグなお二人。

 

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隅々までしっかりと施された意匠の数々が素晴らしい建物です。

貨幣価値としては数十億円かもしれませんが、その何倍もの情熱が注ぎ込まれたもののように思います。

(この規模のホールを建てると、今なら100億円くらいはかかるようです)

 

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ところが残念なことに、この建物の完成を見ることなく富豪の岩本さんは亡くなってしまいます。

相場で失敗しての自殺でした。

第一次世界大戦を契機として起きた大正のバブル。その上昇相場に果敢に売り向かっての徹底的な敗北でした。青天井で燃え上がる相場に身ぐるみはがされて、身も心も焼き尽くされたという感じでしょう。

この時期に起きていた変化は、日本の産業構造まで変えてしまうような劇的で長期にわたるものでした。ヨーロッパの小競り合いに始まり、誰もが「クリスマスまでには」終わると楽観していた戦争は、ヨーロッパ全土からその植民地にまで広がる世界大戦になり、4年間も続きました。戦争によって世界の構図は変わり、日本も大きく変わったのでした。いくらお金持ちでも、とても一人の相場師が戦える相手ではなかったのです。

相場の世界をたくましく生きた富豪は、時代の節目の巨大な断絶の間に真っ逆さまに落ちてしまいましたが、彼の寄付したものはその時代を代表する名建築として残り、中之島一丁目一番地で、今も活躍中です。

 

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勝手にパラダイス ~グランフロント大阪 せせらぎのみち~

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ここは大阪駅北地区、通称「うめきた」

 

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JR貨物駅が再開発された、大阪最後の一等地と言われる場所。。

 

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超一流企業のオフィスとオシャレな有名ブランド店が多数入居する複合高層ビル、グランフロントの前。。。

 

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ここはそのビルの「せせらぎのみち」という施設の一部です。

遊園地ではありません。市民公園でもプールでもありません。

ビルが特別なイベントを催しているわけでもありません。

 

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ママと子どもたちが、大阪最後の一等地で勝手にパラダイスしているだけです。

そして、それは大阪の夏の風物詩になっています。

どこか大阪名物放置自転車と共通する超法規的な自由きままさを感じますが、とても楽しそうです。

 

 

ビクター犬のつぶやき ~梅田スカイビル 七夕~

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梅田スカイビルでは6/3~8/3まで、ロングランの七夕が行われています。

 

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仙台風の七夕飾りが飲食街などにたくさん見られます。

 

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大量にある短冊に書かれた願い事には、ユニークなものも多いです。

 

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(桃太朗くん、それは願い事ではないよ・・・)

と、ビクター犬がつぶやいているように見えました。

 

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パティスリーとっと(認定NPO法人 トゥギャザー)さん 中国・四国まつり

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梅田スカイビルのパティスリーとっとさん。中四国の福祉事業所で作られている製品の特集をされていたので行ってきました。

 

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クッキーなどの定番に地域の特色を加えて一工夫した製品が、いろいろとありました。

 

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香川県のDoやまびこさんの「讃岐うどんさくさく」。

7種類の味のあるかりんとうです。

こちらの施設では完全手打ちの本場讃岐うどんも作っておられます。

他にもその自慢の讃岐うどんが入ったアイスクリームもあるそうです。

 

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こちらは高知県のジョブなしろさんのグァバティーです。

瓶入りのグァバジュースグァバゼリーもありました。

 

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こちらは中四国のものではありませんが、夏場に人気の熊本みかんゼリー。

 

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梅田スカイビルでは仙台風の七夕まつり開催中でした。