冬の終わりに、甘い香りを漂わせる蝋梅(ロウバイ)。
うつむき加減に咲く可憐な花です。
蜜蝋で作ったかのような花びらの表情が独特の魅力です。
他に咲く花の無い梅園に、やさしい光が灯ったかのようでした。
複雑化し過ぎた人間関係と言うか政治状況というかに
すっかり疲れ果てて
もしかしたら半分うつ状態になっていたかもしれない
将軍足利義政は
ネットやゲームにはまって抜け出せなくなったかのように
当時の様々な文化に溺れていきました。
家族も部下も誰もかもが<オレのことをわかってくれない!>
と彼が悩んでいたかどうかはわかりませんが、
まあ病的ともいえる情熱を注いで
後に銀閣寺と呼ばれるようになる広大な別荘をつくっていきました。
脆弱な権力財務基盤しかもっていなかったにもかかわらず、
彼は課金を続けてアイテムを買い漁りました。
今の一般人ならカード破産一直線でしょう。
普通なら周囲から完全に見捨てられる
残念なやつだったかもしれませんが、
そこは8代目将軍という権威はあったのでしょう。
ここに集められ整えられた文物様式は
残念どころか「御物」「名物」となり
まとめて東山文化と呼ばれるようになります。
そしておもしろいことに
ここに集められ整理されたものが
次の戦国の世でも超一級の権威として引き継がれていくのです。
武力で土地を奪い合い下剋上をやっていた時代であっても
文化的な権威は有難たがられます。
<成り上がりものは有名ブランドが好き!>
ということでしょうか。
そして銀閣寺そのものも
元はその前の時代の
足利義満と夢窓疎石へのオマージュでした。
そのオマージュは現在、
すっかり狭くなった敷地と
ほとんど空っぽのわずかな建物を残すだけのものですが、
その権威は義政の時代よりもはるかに強力になり
世界遺産になっています。
琵琶湖疏水・インクライン跡の土手に掘られたトンネル。
通称「ねじりまんぽ」
奇妙な名前です。
中のレンガが斜めに積まれて
ねじれたようになっている
ちょっと変わったトンネルです。
思わず首を傾けて、
頭の上に?マークが出てきそうな感じです。
トンネル内に足を踏み入れると
足元がふわっと浮くような感じになり
そのまま異世界に入ってしまいそう
・・・とまで言うと大げさですが・・・
建築関係の正式な呼称は「斜拱渠(しゃきょうきょ)」
全国に30カ所くらいあって、
そのほとんどが明治時代に作られたものであるとのことです。
その中でもこの蹴上のものは有名です。
トンネルの上に掲げられた扁額には
第三代京都府知事・北垣国道の揮毫で
「雄観奇想」「陽気発所」とあります。
鉄道の下に道路や水路用のトンネルが掘られる時に
その鉄道と道路や水路が斜めに交叉する場合は、
強度を保つためにこの積み方がされたのだそうです。
建築の主役がレンガからコンクリートに代わると
この不思議空間が作られることはなくなりました。