『「近代」の意味』
桜井哲夫 著
1984年刊 NHKブックス
近代の産業化と個人の教育はセットで進展する。
産業の規格化が、個人を規格化する教育を促し、
同じ規格品である個人の平等が成立する。
人間社会が産業の機能と見なされていく時、
それまで機能していた社会の階層構造は分解されなし崩しになる。
近代において規格外の存在は不良品として排除される。
その圧力は若者を自殺へと追い込み、
社会を少子化させる。
平等の暴走はテロや革命の発端にもなる。
「俺があいつでないことが憎い」という強烈な歪みが
均質な近代社会の周辺で生まれる。
近代社会の特徴は、そのシステムが自らを加速させる構造に
なっていることではないだろうか。
宗教が規範であった社会においては、人間の感情も余剰生産物も
現世である社会の外の神の世界へ拡散して霧消したのだろうけれど
神のいない世界ではそれらのものは社会の中に止まり、
社会の動きを加速させるエネルギーとして再び使われる。
それは回生ブレーキのようなものか、
それとも高速増殖炉のようなものかはわからないが、
いずれにしても社会の構造そのものが、
その構造と同じ方向へと技術を導いていくように思われる。
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