錆びた鋼の巨大な鳥居の向こうに、さらに巨大な現代の高層ビルを眺める近代日本陸軍の創始者、大村益次郎。
この姿には日本の近現代史が象徴的に示されているように思えます。
西洋の近代国家群に抗うべく中央集権によって鍛え直され、巨大化した鋼の国家。
壊滅的な敗戦によってその鋼は錆びつきましたが、今度はその錆を保護膜とし、産業国家としてさらなる高みに昇った日本。
鋼の鳥居の内側には銅の鳥居があり、さらに内側には木製の門と鳥居があります。
そして拝殿と本殿、さらに合祀された神霊の<名簿>があります。
その数、246万6千余柱。
近代日本もまた、正にヤオヨロズの神の国です。
英霊の魂が神となり、巨大な近代国家を作り上げていくという一途なストーリー。
靖国の参道のど真ん中を貫ているのは純粋なナショナリズムそのものであり、それは日本という近代国家の中心にある原理です。
だからこそそこは理屈抜きの愛着と、それに対する反発が起きるのでしょう。
そして近代的なナショナリズムのナイーヴな魂が、近代兵器という殻に不可避的に覆われるという事実は、靖国に起きる問題をさらに難しくします。
大村益次郎が錆びついた鋼の鳥居の、さらに向こうを見ているように、靖国に関して起こる対立が乗り越えられ、さらなる高みへと解消されることを願いたいです。
“鋼の対立 ~靖国神社~” への1件のフィードバック