今は京都文化博物館の一部になっている旧日銀京都支店。
明治39年(1906年)竣工、築110年になりますが、
今もセントラルバンクの威厳を感じる建物です。
貨幣の発行を独占する中央銀行は
かつては軍隊や政治機構と並ぶ
近代国家の中心的存在でしたが、
民間資本が成長しグローバル化の進んだ現在では、
世界の金融プレーヤーの中の冴えないひとりになっています。
重厚な金庫室も今は喫茶店。
金庫室の中には最重要のものを保管する
もうひとつの金庫がありました。
明治に建てられた、この金庫室、
西洋建築でありながら
和風の「蔵」のような雰囲気もあって落ち着きます。
この金庫室が昭和になるとすいぶん様変わりします。
こちらは昭和3年に建てられた旧日本銀行松江支店
(現在はカラコロ工房)の金庫室。
明治の金庫室が牧歌的に感じられるくらい重々しさを増しています。
地下にあることもあって、この中にいると息苦しいばかりですが、
映画やドラマで緊張感を表現する時には使いやすそうです。
電子化の進んだ21世紀の金融において、
金庫室というものの存在感は
中央銀行の存在感と同様にすっかり薄れ
暗号化やパスワードやブロックチェーンに取って代わられています。
今の金庫室はコンピュータネットワークの中にあり、
それを破ったり守ったりするのは人間同士であり、
それは昭和の金庫室よりもっと息の詰まる頭脳戦です。
破る側になるか守る側になるかは、
いつの時代でも人の気持ち次第ですから
結局のところ最後の金庫室の鍵は
人のハートに挿して回すものということになるのでしょう。
息詰まる頭脳戦の次の
息をすることもないAIたちの時代には
戦いそのものが
もう人の手の届かないものになりつつあります。
もしかしたら人は、
人が人になった時に既に
パンドラの鍵を回してしまっていたのかもしれません。
“最後の金庫室 ~旧日銀京都支店(京都文化博物館別館)~” への1件のフィードバック