この、ほぼ雑草に覆いつくされた広い場所は
奈良から平安の時代に200年以上に亘って
近江の行政の中心であった「近江国庁」があった場所です。
平安時代の中ごろに国庁がなくなり
それから多分1000年くらいずっと忘れられていて
20世紀の後半の宅地開発で見つかり
国の史跡になりました。
しかし、自動車もまともに通れないような
古い住宅地の真ん中に埋もれて
広い場所であるにもかかわらず
今でもほとんど人々の意識にのぼることがありません。
大半の住民にとっては
近所に1000年前の遺跡があることに
何の意味もなく
どんな関わりも見いだせないのです。
なのでこの場所は
野良猫の散歩道か、悪ガキのたまり場、または不法投棄場所
というような
とても長閑なところになっています。
はるか昔の忘却の後に
もう一度忘れられたこの場所では
わずかに復元された建物も
逆にほんの一部だけが辛うじて残っている
1000年前の廃墟のように見えてしまいます。
いっそ周囲に咲いている彼岸花を
史跡内に盛大に植えてみたりすると
もう少し見栄えがよくなるかもしれません。
さらに進めて
「忘れられた史跡を住民の手で季節の花畑に変える」
というNPOを設立して
それに行政が少し補助をすれば
住民生活と一体となった新たな史跡活用ができるかもしれません。