人類学者レヴィ=ストロースによれば、
人類の社会的な営みの根幹には「花嫁交換」があるということです。
命を生み繋いでいく最も重要な存在としての女性を交換することは、
その一族同士が命を交換するに等しい行為であり、
極めて強い結び付きを発生させます。
そしてその交換を一定の規則に則って行うことにより、
結び付きは長期にわたって安定することになります。
親が決めた許嫁や政略結婚のようなものは、
この原理によって発想されものです。
ですからその原理で動いている嫁が子供を産めなかったりすると、
その存在意義が問われて肩身の狭い思いをすることになるわけです。
それは跡取りや情愛の問題に止まらず、
命のやり取りで成立している社会原理に抵触することに
なってしまうのです。
もちろんそれは世界がムラや階級や部族によって
線引きされていた時代のことであり、
人々が極めて流動的に動く現代の感覚とは合わないものです。
人々が境界を越えて外の世界に彷徨い出すようになって、
人類は当て所なく恋愛するようになったとも言えるでしょう。
参考文献:『親族の基本構造』
C.レヴィ=ストロース/福井和美訳 青弓社 2000年
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