かつての日本にはたくさんのゴッドファーザーがいました。
ゴッドファーザーといってもマフィアのボスのことではありません。
名付け親のことです。
ゴッドといっても日本の場合、その神様は祖先の霊を意味します。
ひとつの祖先から分かれたひとかたまりの一族。
同じ祖霊を祀る人たちはひとつの大きな家族でした。
その大きな家族に生まれた新しい命は、
大きな家族の長老などによって名付けられ、
その庇護下で育ちました。命の誕生は生物学的な繁殖でも、
DNA的なコピーでもなく霊的な結び付きによる循環でした。
生まれては消え、消えてはまた生まれる。明滅し循環する命と時間。
人は星や自然や季節とともに生まれ変わっていました。
命は与えられ、そして突然奪われ、また還ってくる。慈悲と無慈悲、
やさしさと厳しさが鋭く隣り合わせにあった時代のことです。
現在では、人々の生活圏が広がり、親族との繋がりは希薄になりました。
その元締めである祖霊も帰るべき神棚を失って行方不明です。
ゴッドファーザーの「ゴッド」が消えてしまって、
小さくなったファミリーにはやさしいお父さんだけが残りました。
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