少々古めかしいしきたりでは、新婦が婚家に入ると、挨拶回りを行うことになります。
その時に配るのが本来の「内祝い」。
挨拶回りの時にお祝いを頂き「内祝い」を渡していたのです。
プレゼント交換というか、挨拶という意味では名刺交換に近かったかもしれません。
(逆に考えると日本人の名刺交換好きは、この挨拶回りの民俗に影響かもしれません。)
階級社会や村社会で地縁・血縁を中心に世の中が成立していた時代には、
生活範囲が限定されていたので花嫁自身が回ることも可能でしたが、
生活範囲が現代的な広がりを持つようになると回りきれなくなります。
濃密で固定的であった人間関係が希薄で流動的なものに
変化した現代においては、
挨拶回りを行う範囲さえ限定し辛くなります。
そこで任意に範囲を設定して披露宴に招き、
「引出物」で一気に挨拶を済ませ、
その範囲に収まらなかった人たちに関しては頂いたお祝いに
「お返し」をするという二段構えの方法がとられるようになりました。
そして引出物の熨斗紙には「寿」が、
お返しには「内祝い」が採用され、
それが定着するようになりました。
引出物と内祝いは本来同じものだったのですが、
時代と共に分化したのです。
参考文献:『日本の通過儀礼』 八木透:編 思文閣出版 2001年
『贈答の近代』 山口睦 東北大学出版会 2012年
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