ハイブリッドの神様 ~明治神宮~

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明治神宮は鎮座100年に向けて、現在突貫工事中です。

明治天皇と昭憲皇太后がここに祀られたのが大正9年(1920年)で、次の東京オリンピックの年(2020年)が鎮座100年にあたります。

 

明治神宮11

 

前回のオリンピックの時も明治神宮のある代々木と神宮外苑は主要な会場であり、オリンピックと明治神宮の間には深い関係がありそうです。

むしろ鎮座100年に合わせて、何が何でもTOKYO2020招致が行われたのではないかと思えるくらいです。

 

明治神宮3

 

もちろんオリンピックの招致は以前から行われてはいましたが、2020へのこだわりには特別なものを感じます。

・・・感覚的なものでしかありませんが・・・

 

明治神宮28

 

そこで重要なキーワードが「国威発揚」です。

明治神宮は開国から富国強兵へと進んだ近代日本のシンボルである明治天皇を祀る場所です。

 

明治神宮29

 

代々木は占領軍施設だったところを、オリンピックを契機に日本が取り戻した場所であり、代々木競技場は戦後日本の技術力の高さを世界に誇示する建築でした。

そして世界的に有名になったこの建物は、明治神宮本殿正面の直線上にあり、屋根の形は神社の社殿を思わせ、上から見た形は勾玉のようです。

丹下健三の天才的なひらめきに満ちたこの建物は、明治神宮と一体的に存在し、近代世界における日本の「国威」を端的に表すものとなっています。歴史的にも意匠的にもです。

だからこの場所であり、だからその年でなければならなかったと思えるのです。

さらに言えば、だから新国立競技場は徹底的にザハではなく、絶対的必然的に隈研吾でなければならなかったとも思えます。

 

明治神宮4

 

隈研吾は丹下健三の設計した代々木競技場を見て、建築家を志した人であり、現在建設中の明治神宮ミュージアムの設計者でもあります。

神宮本殿の直線上に丹下があり、さらにその延長線上に隈があるとも言えるでしょう。

最初から本命だったはずの人が、最初は応募さえせずに、決定後の大どんでん返しであっさり設計者に決まるというのは、あまりに劇的で出来過ぎの感もあります。

 

明治神宮7

 

そしてもうひとつ重要なのが、100年前に11万人の勤労奉仕で植林され、設計通りに原生林化した<神宮の杜>の存在です。

 

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近代的科学的知識と国民の団結によって人工的に完全な森林をつくることに成功していることと、巨大でモダン建築を膨大な木材で覆う隈健吾は、100年の時を経て共鳴しています。

 

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神道的であり復古的でありナチュラリズムでもあるものが、同時に近代的であり科学的てありナショナリズムでもあること。

気高い奉仕の精神と愛国心と信仰心と洗脳的教育と強制的労働と植民地支配とが、解き難くワンセットで提示されること。

TOKYO2020は、一見矛盾するものをシームレスに結びつけるハイブリット技術によって出来上がっていくのかもしれません。

 

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そしてそこで<和魂洋才>が日本人のアイデンティティとして再発見されていくのかもしれません。

 

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真夏の都市伝説 ~相生橋~

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1990年代に架け替えられた相生橋。

細身の鋼材を組み合わせたトラス構造で、重厚な永代橋やバブリーな中央大橋などと比べ、軽快でリズミカルな印象です。

 

相生橋12

 

夜はライトに照らされて黄色く見えますが、本来は薄い緑色です。

 

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この橋を越中島側に渡ると東京海洋大学の明治丸が見えます。

夜中に写真を撮ると幽霊船のようです。

・・・ちょっとかっこいい・・・

 

相生橋11

 

そういえば相生橋も巨大な骸骨のようにも見えます。

<<<この世とあの世を繋ぐ骸骨橋と幽霊船!>>>

この夏限定、最新都市伝説の誕生です。

 

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★隅田川にかかる橋シリーズ

 

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盛り場人生 ~辰巳新道~

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辰巳新道2

 

門前仲町の辰巳新道。

戦後の闇市からはじまり、今も昭和の盛り場の雰囲気を色濃く残す場所として人気があります。

東京メトロのCMでも取り上げられています。

 

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古くて狭いスナックや居酒屋がひしめいていて、ごちゃごちゃしていまが、こういう場所は、きれいに整備されると活気を失うのでしょう。

 

辰巳新道3

 

あまりスマートになるとたぶん人間は生きにくい。
狭くてごちゃごちゃでボロボロでも、活気のある人生の方が、きっといいということなのかもしれません。

 

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こちらがCMで石原さとみさんが、おいしそうに煮込みを食べていたニューもつよし。食券制の居酒屋です。

 

 

都市の墓標 ~中央区佃~

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1990年代、旧石川島播磨重工の跡地はウォーターフロントとして再開発され、リバーシティ21に生まれ変わった。しかし、そこに隣接する佃の町には再開発とは全く無縁だった場所が今でも多く残っている。

 

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こういう場所は昭和のノスタルジーだとも言えるし、実際それをアピールする飲食店もある。

 

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しかし今にも崩れそうな昭和の長屋と、平成の再開発で生まれた超高層マンションを並べると、大きな落差というか都市における生活の格差を感じざるを得ない。

 

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そしてタワーマンションには、投資目的で購入され一度も灯りのついたことのない部屋も多い。

都市の大規模再開発は、神々しい光を放つのでそれによって生まれる影も濃いものになる。

 

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老朽化して人の住めなくなった廃墟と、最初から人の住まない空っぽのマンションが並べば、ここはやがてかつてと同じ無人島に戻ってしまうのだろう。

それは格差の果ての究極の未来。

 

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先ほどまで明るい監獄だと思っていた風景が、今度は都市の墓標のように見えてきた。

 

 

夜景の監獄 ~中央大橋周辺~

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中央大橋4

 

永代橋の少し下流に架かるこの橋が中央大橋と呼ばれるのは、この橋が隅田川の中央にあるからでも、中央に高い塔があるからでもない。中央区を代表する橋だからだそうである。

 

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とても立派な橋であるが、なにもここまで大げさな構造にしなくてもよさそうなものであるが、ウォーターフロント開発の入口を象徴する意味もあったのだろう。

 

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そういうセレモニー性を強調するためか、隅田川と友好河川であるセーヌ川のあるパリ市から贈られた像も飾られている。

 

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そして、その御大層な橋を渡ったところにあるのが、ウォーターフロント開発の代表であるリバーシティ21だ。林立するタワーマンション、江戸湊発祥の地を示す錨のオブジェ、パリ広場、佃公園、そして人足寄場跡である。

 

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湾岸の再開発が大きな工場の跡地で進められたというのはわかるが、ここで特徴的なのはこの場所が、工業化以前には人足寄場であったということだ。

 

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人足寄場とは、江戸時代の刑務所である。

刑務所と言っても懲罰的な隔離施設というより、地方から流入してきた無宿人(戸籍を持たない者)たちの職業訓練施設として機能していたようだ。

そしてその制度を作ったのが、時代劇の有名なヒーローの一人である火付盗賊改方長谷川平蔵である。

 

中央大橋10

 

考えてみれば、江戸-東京に限らず、近代的な都市というのはどの場所でも常に<人足寄場>的な存在なのかもしれない。

都市が形成されていく過程には、地方からの急激な人口の流入があるからだ。というより、そうやって人々が集まった場所が整備されて都市と呼ばれる類型ができるとも考えられる。

長谷川平蔵は、そういう都市のあり方を肌で理解していたので、人足寄場を職業訓練施設に変えたのだろう。合理的で現実的な判断である。

しかし、そういう都市の性質には、人口の再生産システムは組み込まれていないので、人足寄場の延長である都市ではどこでも少子化が著しくなるのである。

 

そんなことを考えながら、ウォータフロントのタワーマンション群を眺めていたら、そこが美しい夜景の監獄のように思えてきた。

 

 


★隅田川にかかる橋シリーズ

 

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無限のリベット ~昼の清洲橋~

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現在の清洲橋が架けられたのは昭和3年である。

今から90年前の職人たちは、重機が普及していなかった時代に、これだけの橋をどんな手順で組み立てていったのだろう。

 

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現在あるようなクレーンを使わずに、どうやってこのアーチを川の真ん中に立てたのだろう。

五重塔だって城だって昔から建てているし、戦艦だって作っているのだから、そんなことは容易いことだっとのだろうか。

 

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もし一気に建てることができなかったとするなら、小さな部材を積み上げていったのだろうか。

 

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もしそうなら、この橋に打たれてている無数のリベット(鋲)の意味もわかる。

 

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小さな部材を繋いでいくから、それらをしっかり留めるためにこれだけのリベットが必要だったのだろう。

 

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手作業でひとつずつ、無限に続くかと思えるほどの鋲打ちを丁寧に正確に繰り返して橋を組み立て、その後の無数の人々の往来を90年間も支え続けている。

 

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これが Made in Japanの遺産である。

 

 


★隅田川にかかる橋シリーズ

 

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光の港から ~伊丹スカイパーク~

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伊丹スカイパーク12

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伊丹スカイパークは伊丹空港の滑走路に隣接する幅80m、長さ1.2kmのとても細長い階段状の公園です。

 

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空港の騒音対策のために作られた施設なので、滑走路に合わせて細長くなっています。

 

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この公園は完成するまでに15年もかかっています。

国と県と市と住民と空港会社が入り乱れて、延々と続けられた細長く気の長いプロジェクトだったようです。

防音のために単に閉鎖するのではなく、それを逆に開放して対策とするという発想なので調整が難航したのかもしれません。

 

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できあがってみると、飛行機の離着陸を間近で見られる稀有な公園として、予想以上の人気となっているようです。

 

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確かに、飛行機が目の前で飛び立つ瞬間を見ると、心躍るものがあります。

この公園を訪れる人にリピーターが多いというのも頷けます。

飛行機は究極的に洗練された形の乗り物かもしれません。

 

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日が暮れてからも、光を放つ空港の様子は美しいものです。

 

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そしてその光の港から、夜に向かって飛び立つ姿も美しい。

 

<えびす>の変遷 ~西宮神社~

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兵庫県西宮市の西宮神社。

えびす信仰の総本社で、正月の福男競争でも有名です。

「えびす」は複雑な性格の神様です。

日子(太陽神)→蛭子(漂流神)→えびす(漂着神)

→漁労神→海上交通神→商業神→福の神

というような感じに変化して、いくつもの性質が複合して、全部まとめて日本を代表する福の神ということになります。

 

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蛭子(ヒルコ・エビス)はイザナギ・イザナミの子で天照の兄ですが、海に流されてしまいます。

天照が太陽の女神で、蛭子(日子)がそれと対になる太陽の男神であったともいわれています。

女神を信仰する勢力が優勢になり、蛭子は追放され、そして漂着した西宮神社(その前身)に祀られたというストーリーです。

 

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そして昇る太陽と海の恵みが一体となり、富を積んで海を渡って来る海運も一緒になり、漁労や海運の集積が市になり<商売繁盛>につながる。

さらに西宮神社の本殿には天照もスサノオも(後に大国主も)祀られていて、そのために屋根が三つ連なる(三連春日造)という複雑さも加わっています。

 

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拝殿は、戦後の再建にコンクリートが使われているためか、白が目立って、近代建築による和風表現という印象です。

 

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拝殿とともに近代的な印象を受けるのが、その両脇にある青銅の神馬像です。

酒造の名門、「白鷹」の辰馬家によって明治32年に奉納されたものです。

 

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作者は後藤貞行。皇居外苑の楠木正成像の馬を作った馬彫刻の大家です。

流麗で躍動的でありながら、脚部には力強く正確なリズムを刻む機械的な要素も感じます。

 

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それに比べると隣に並ぶ狛犬の表情は牧歌的です。

西洋画に学んだ神馬のリアリズムに対する東洋的な様式美の像と言えるかもしれません。

 

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戦争中の空襲で焼けなかった大門と築地塀は国の重要文化財に指定されている大変重要なものです。

 

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そしてその日本最古の築地塀は日々鳩に啄まれています。

 

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<びわこテンプレート>と<ロクブンノイチ野帳>

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コクヨ滋賀工場さんで作られている「びわこテンプレート」と「ロクブンノイチ野帳」です。

「びわこテンプレート」は1/100万スケールのびわ湖とそこに浮かぶ二つの島が簡単に描けるテンプレートです。

さらにそこに生きるナマズやカイツブリ、歴史・文化を代表するお城や手裏剣などのアクセントもテンプレートで加えることができます。

「ロクブンノイチ野帳」は、びわ湖の面積が滋賀県全体の1/6を占めることからつけられた名前です。見返し部分には、琵琶湖・淀川水系のヨシ紙が使われています。

 

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別々の製品ですが、セットにするとぴったりになるよう作られています。

 

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野帳(フィールドノート)という実用的で固いイメージの製品に、小さなユーモアをちりばめたテンプレート。

その二つを<びわ湖>という特徴的なアイコンで結び付けるデザインセンスが素晴らしい。

 

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「びわこテンプレート」は今年(2017年)のISOT日本文具大賞のデザイン優秀賞を受賞しています。