最近高速道路のICができて訪れやすくなった湖東三山。
比叡山・天台宗の寺院として中世には大きな権力を持っていましたが、時代の節目に登場した魔王織田信長に散々な目に会わされて没落します。
ここ西明寺も焼き討ちされるのですが、現在国宝に指定されている本堂と三重塔は何とか残りました。
確かに山の上の木造建築にいる敵には、下から火を放てば極めて有効だったのでしょう。
下からやってくる炎とその背後の弓や鉄砲、相手の陣容さえ把握できなくて、上に逃げても炎は自動追尾してくる。
夕方に一人でこの場所に立っていると、その時の叫び声が聞こえてきそうです。
でも貴重な文化財をそんなに簡単に焼いてしまっていいのか?
<オレは古臭い木の人形など欲しくない。薄暗いボロ小屋もいらない>
<支配権さえ手に入れればいくらでも新しく作れる>
<オレ様は未来志向なんだ!だから古いものは全部焼け!!>
<焼かなければお前ごと焼くぞ!!!>
くらいの合理的で強引で近代的な論理だったのでしょう。
時代が変わるとはそういうことなのでしょう。
境内には樹齢1000年の杉をはじめとする古木も多く、四季折々の花も豊かです。
信長の焼き討ちの後に育った木々でさえ既に樹齢400年。
人々の時代が何度変わっても、その背景で自然は静かに時を重ねます。
権力の牙を失って久しい寺院は、山の奥でひっそりと古刹の時間を刻みます。
今は春ですが一部に紅葉も見られました。
透き通るような赤色でした。
季節が暮れていく頃には、この紅葉が境内に広がり、絶景に変わっているでしょう。
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