明治の「結婚の儀」を手本とした永嶋方式が世の中に広がる以前、
日本の結婚式には神様の登場するシーンはありませんでした。
親族や知り合いを中心とした「人前式」が一般的でした。
その頃の結婚式のメインは花嫁が輿に乗せられて親戚一同と共に
婿方へ向かう「花嫁行列」でした。
花嫁が婿方の敷居をまたぐことを「輿入れ」、
その後婿方で行われる杯事を「祝言(しゅうげん)」と呼びました。
「輿入れ」は夕方から夜に行われることが多かったようです。
<揺れる提灯の行列と輿の上の花嫁>というのは幻想的な光景ですが、
本来この行列は実家から婚家へ花嫁の魂が転移することを
示す行為だったのでしょう。
当時の支配階級である上級武士や裕福な商人たちは、
それなりに派手な結婚式をしていたようですが、
長屋の庶民の結婚式は質素なものでした。
仲人や花嫁までが準備を手伝って、近所の人たちが持ち寄った
酒と肴で宴会するというような手作り感豊かな
ほほえましいものだったようです。
江戸時代の作法の基本は鎌倉時代の武士の弓道と馬術を源流とする
小笠原流でした。
結婚式の作法もその小笠原流に基づいたものでした。
参考文献:『江戸の冠婚葬祭』 中江克己 潮出版社 2004年
『小笠原流 日本のしきたり』 小笠原清忠 ナツメ社 2008年
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