2016.09.1

なつかしさの境界線 ~美山かやぶきの里 北村~

miyakobana

 

かやぶきの里29

かやぶきの里30 かやぶきの里21 かやぶきの里26

 

シニアな女性たちに大人気の美山かやぶきの里。

 

ここを訪れる多くの女性たちが

この風景を「なつかしい」と言う。

しかし、観光地巡りをしている今のシニアは、

大半が昭和生まれで、戦後の人たちも多い。

戦後生まれで田舎への疎開経験さえない

今の「おばあちゃん」たちが

江戸時代に建てられた山村の風景をなつかしむのは何故だろう。

 

かやぶきの里6

かやぶきの里16 かやぶきの里13 かやぶきの里19

 

もちろん、高度経済成長が始まる前の

シニアたちがまだ幼かった頃の日本には

このような風景が多く残されていたということもあるだろう。

もしかしたら今のおばあちゃんたちが

子どもの頃に遊びに行った

おばあちゃんたちのおばあちゃんたちの家が

この村の風景そのものだったのかもしれない。

そして今の「おばあちゃん」たちは、

素朴でやさしかった昔々のおばあちゃんたちのことを

この場所の風景とともになつかしく思い出すのだろう。

 

 

かやぶきの里35

 

地味なアースカラーに埋め尽くされた景色の中に

鮮やかに浮かび上がる赤い鼻緒の下駄。

おばあちゃんのあばあちゃんたちにとって、

これは憧れの一品だったことだろう。

 

 

 

かやぶきの里28

 

地味なアースカラーに埋め尽くされた景色の中の

もうひとつの目立つ「赤」がこのポスト。

村の入り口に置かれているものだ。

これも「なつかしい」と言われるが

戦後設置されたものなのでここでは新参者。

 

木と漆の赤と比べると

鉄とペンキの赤は無骨である。

 

本来なら近世の世界に200年後の未来からやってきた

スーパーモダンで異質な存在のはずなのだが

ちゃっかりこの風景に溶け込んでいる。

というか、このポストが村の入り口を守護している

道祖神のようにも見える。

 

このポストは「現在」の世界と「昔々」の世界の境に置かれた

「ちょっと昔」であり、

それは「なつかしい」という単語で

過去と現在の間に一線を引いている。